【卒業生を送る会】未来へ向かってバイバイバイ♪｜リアクション

【卒業生を送る会】未来へ向かってバイバイバイ♪

☆驚きのお誘い

（尚輝先生をお誘いしてダンスを申し込みたいです）
　時子はそう思っていました。
（他にダンスを申し込まれてた時は私は後からで大丈夫です）
　奥ゆかしくそうも思っていたのですが、実際に誘いそうな人の心当たりはありませんでした。
（まゆ先生とか……ないですよね？）
　などと考えていると。
「五十嵐先生、僕と踊ってもらえませんかぁ」
　そんな声が聞こえて、ビクリとしました。
　女生徒……ではなく、男性の声だったのです。
「ええっ？　何言ってるんですか……」
　呆然とする尚輝。
　周囲からは女生徒の黄色い声と羨望の視線が飛んできています。
　それもそのはず、声をかけたのはウォルター先生でした。
　時子も呆然としてその様子を眺めていました。
「いやあ、せっかくの機会ですし。僕はさっきから女子のいないところへ逃げていたんですがそうも言ってられなくなってきたので、五十嵐先生に協力していただこうかと」
「……何を言っているのかよくわかりません」
　混乱した様子の尚輝。
　ウォルターは尚輝に近づいてきました。
「……あの」
　時子は思わず前へ足を踏み出していました。
「尚輝先生は私と約束がありますので、ごめんなさい」
　口をついて出た言葉に、自分でも驚きました。
「それは失礼。それじゃ」
　ウォルター先生は気を悪くした様子もなく、踵を返してさわやかに去っていきました。

「ありがとうございます……」
　尚輝先生の言葉に、時子は我に返りました。
「いえ。びっくりしましたね」
　くすりと笑って、時子は尚輝先生を見つめました。
「踊っていただけますか？」
「あ、はい。下手ですが」
　ワルツのリズムに乗って、二人は踊り始めました。
　尚輝のダンスはややぎこちないものでしたが、時子は近い距離にドキドキしていました。
（でも先生の傍は安心できるので心地よいドキドキです）
「尚輝先生、お上手ですね」
「そうですか？」

　あたりが暗くなり、BGMがチークダンスの曲に変わりました。
　時子は、音に合わせて尚輝に寄り添って踊ります。
（ドキドキが聞こえてしまうかもしれないけど）
「尚輝先生とこうして踊れて幸せです」
「……」
「これからも傍に居たいです」
　時子は、尚輝先生の体にそっと手をまわし、力を込めて頬を寄せました。