【卒業生を送る会】未来へ向かってバイバイバイ♪｜リアクション

【卒業生を送る会】未来へ向かってバイバイバイ♪

☆ダンスタイムの始まり

「うま。もう一個食べとこ」
　メロンをつまみ終えたラッセルに、柚春は声をかけました。
「桜井先輩、ご卒業おめでとうございます！」
「稲積！　期待の大型新人、後は任せたぞ（笑）」
　ラッセルは笑顔で答え、先輩らしくアドバイスします。
「２年で後輩の扱い方については慣れてきたかもだけど、最上級生はひっぱって行かなきゃなんねーからな。なーんて、稲積はしっかりしてるから心配ねーか」
「僕なりに頑張ってみます。ところで、これ先輩の香りをイメージして作ったカードです。よかったら受け取ってください」
「えっ？！　俺に？」
　思いがけないサプライズに、ラッセルは目を見開きました。
「フルーティでありながら男性的で、繊細そうで力強い男性をイメージした香りです。
　最初の印象は陽気だから、マンダリン。
　軽くない優しさがあるところが、ジャスミン。
　爽やかだけど暖かなところが、サンダルウッド」
「お、おう」
　具体的にどれがどんな香りなのか、ラッセルにはわかりませんでしたが。
　カードを見ると、
『ご卒業おめでとうございます！　これからもキリッと冷たすぎず燃えるように熱すぎない素敵な先輩でいてくださいね』
　と書かれていました。
「ありがとな……すげえ嬉しい！」
　カードを押し頂くラッセルに、柚春は最後まで迷った点を伝えます。
「もっとレモングラス……彼女の香りと一緒にいても合うような香りで良かったかな？　と迷ったんですけど」
「すげー考えてくれたんだな。俺は香りの名前とかわかんねーけど、すごくいい香りだと思う」
　心からの感謝を伝え、ラッセルは言いました。
「まー、なんだお世話になったし、大学や見かけた時は気軽に声かけてくれ。晴月と遊んでやってほしいし、相談あるかもしんねーし……」
　後ろのほうはごにょごにょと、ラッセルがつぶやくと。
「それでは、ダンスタイムです！」
　司会の言葉と共にムードある音楽が流れ始めました。
「お、ダンスだって。行って来いよ。誘いたい奴いるだろ」
　そわそわし始めた柚春は、ラッセルに感謝の視線を向けました。
「はい。先輩は？」
「俺は気が向いたらいく」
　代わる代わるみんなと踊るのはありかな～、と思いながらラッセルは答え、柚春は一礼すると走っていきました。

　八神修は、七夜あおいと立食を楽しみ、雑談していました。
「修君、あのパスタの味、たらこだと思う？　明太子だと思う？」
　テーブルの料理を見て尋ねるあおい。
「たらこかな？　でも明太子と言えば、あおいの進学先の名物だな」
「そうだね。とんこつラーメンとか、向こうの名物いろいろ食べてみたいんだ。あっ、食べ物だけじゃなく名所もね」
「向こうには屋台村もあるそうだし、美味しいものには困らないだろうな」
「楽しみにしてる。ところで、修君はいつ寮から引っ越すの？」
「俺の引越し？　三月末頃かな。大学の近くから通う予定だよ」
「住所がわかったら教えてね」
「もちろん。真っ先に知らせるよ」

　その時、ダンスタイム開始の放送が流れました。
　開始と同時に修はあおいのほうへ歩み寄り、両足を揃えて軽くお辞儀をします。
　正式な作法であおいにダンスを申し込んだのでした。
　ダンスが得手の修は、あおいとも過去何度か踊っています。
　あおいは頭を横に傾けるように頷いて、微笑みました。
　OKのサインです。
　修はあおいをスムーズにエスコートし、丁寧に踊るのでした。