【卒業生を送る会】未来へ向かってバイバイバイ♪｜リアクション

【卒業生を送る会】未来へ向かってバイバイバイ♪

☆ボタン配布会

「やあやあ、御機嫌よう、せにょーる＆せにょりーた！　寝子高随一のイケメン紳士でお馴染みの信彦さんだよ！」
　場が温まってきたのを見計らって、信彦はマイクを手に声を上げました。
「……なんて言っていられるのも、残り僅かだね。後輩レディ達の嘆きが聞こえてくるかのようだよ」
　信彦は耳に手を当て聞き入る仕草をしましたが、聞こえるとしたらたぶん幻聴でしょう。
「さて、それじゃあ制服の第二ボタンが欲しい人は並んでくれたまえ！　ボタンも制服もスペアは沢山用意したから、数が足りないなんてことはないはずさ」
　ざわ……と、起きたどよめきに信彦は答えます。
「えっ、卒業式じゃないのに気が早いって？　卒業式当日は混雑が予想されるからね！　前売り券？　期日前投票？　まあ、そんな感じのサムシングさ」
　謎理論に生徒たちはあっけにとられます。
「さあ、遠慮せずにどうぞ！」

　信彦の前に女生徒の長蛇の行列ができる、なんてことはもちろんありませんでしたが。
　そこへ、柚春が現れました。
「やあ、柚春ちゃん来てくれたんだね！」
　さっそくボタンを渡そうとする信彦ですが、それより先に柚春がプレゼントを差し出しました。
「八十八旗先輩、ご卒業おめでとうございます。これ、先輩のイメージの香りを作ってみました」
「俺の香り？！　すごいね！」
「品があって洗練された男性をイメージしたエレガントな香りです。最初の印象は爽やかだから、バーベナのフレッシュさ、だけどちょっぴり個性的な所が、コリアンダーとかハーブ系のスパイシーさ、それから多分、エキゾチックな大人になりそうだから、ベチバーを！」
　カードには、『ご卒業おめでとうございます！　みんなを魅了するのは程々にしてくださいね』とメッセージが記されていました。
「ありがとう……ありがとう柚春ちゃん！　大切にするよ！　お礼に第二ボタンを受け取ってくれたまえ」
「どういたしまして。ボタンをいただけるなら、第三ボタンで。二番目以外にも意味があるらしいですよ？」
「そうなの？」
　そこへ、ののこがひょこっと顔を出しました。
「それじゃ私は第４ボタンもらおうかな～、記念だし」
「みんなシャイだなあ。まあいいや、第三でも第四でも愛を込めるよ！」　
　信彦は上機嫌で、二人にボタンを渡したのでした。

　そのあとは誰も来ませんでしたが。
「やっぱ卒業式当日狙い、なんだね」
　超ポジティブ思考の信彦はノーダメージで、持ち込んだボタンを片付けるのでした。

「ふう、ちょっと飲み物とデザートで一息つきましょうか……それにしても、卒業したらこの料理を食べる機会も無くなるんでしょうか……それはちょっと残念ですねぇ」
　紫苑は、どの料理も美味しかった、と懐かしみます。
「しっかり味わって、この料理を味を覚えて帰りませんと……ふふ、自分でこの味を再現できたら、今日の事思い出して二つの意味でお腹いっぱいになりそうですね♪
では、しっかり味を覚える為にも、もっともっと食べませんと……ひとまず、また料理を全種類食べて回りましょうか」
　紫苑はまた、取り皿を手に料理のテーブルに向かうのでした。