【卒業生を送る会】未来へ向かってバイバイバイ♪｜リアクション

【卒業生を送る会】未来へ向かってバイバイバイ♪

「英二くん、このサンドイッチ美味しいよ！」
　目を輝かせるののこの手元を見て、英二は頷きます。
「それじゃ僕もいただこうかな」
　サンドイッチを取りながら、英二は思いました。
（寝子高生活、いろいろな行事に野々さんたち同級生と一緒に参加して有意義に過ごせたと思うし良い思い出になっている気がする）
　そしてサンドイッチにかぶりつきます。
「本当だ、美味しいね」
「でしょ！　こっちのコロッケも、アツアツのサクサクでおいしいよ～」
　コロッケを食べていると、顔見知りの下級生が話しかけてきました。
「佐藤先輩、ご卒業おめでとうございます」
「ありがとう。僕たちは卒業するけど、君たちも何か思い出になる体験が出来る機会を持てたら良いね」
　今までのことを思い返しながら、英二は話しました。
　ふと心に疑問が湧きました。
（野々さんが卒業したら、寝子高はどうなるんだろう？　神魂の影響は今まで通りなんだろうか）
　心の隅にある疑問には、今は誰も答えを出せないことでしょう。

（少しおなかがすいちゃった）
　莉鳥が料理をいただきつつ、ぼんやりと壁際にたたずんでいると。
　陸上部の後輩、中倉琉歌がこっちに向かってくるのが見えました。
（中倉さん……！）
　莉鳥は思わず身構えました。
『――お誕生日おめでとうございます』
　そう言って昨日、立ち去り際に琉歌に一瞬のうちに唇を奪われたことが鮮やかに思い浮かんで。
　琉歌は、けれど普段と変わらない様子で自然におっとりと笑みを浮かべました。
「先輩。少し早いですが卒業おめでとうございます」
「……ありがと」
　素っ気ない返事をする莉鳥の様子は、他の知人からはいつもと同じように見えたことでしょう。
　けれど莉鳥は内心で困惑していました。
（なんで、平気でいられるの？）
　つかみどころのない琉歌は、それからも平然と話しかけてきます。
「……で、……から、……ですよね」
「ええ……」
（からかってるの？　外国人じゃあるまいし、挨拶でするものじゃないわよね……）
　莉鳥は困惑するばかりで。
　琉歌が立ち去った後、思い出そうとしても、何を話したかよく覚えていないのでした。
（忘れよう。気にしても仕方ないわ……）
　もう卒業だし。
　そう自分に言い聞かせるのでした。

　時子は、尚輝先生の傍らに立ち、話しかけました。
「尚輝先生、ちゃんと食事をとっていますか」
　実験していて食事を忘れることのある先生ですから、しっかり食事をとってほしいと心配なのです。
「ええ、食べてますよ。さすがにここで実験するわけにはいかないし」
「ならよかったです。あっ、このサラダ美味しいですよ」
　勧められた料理を、尚輝は素直に取り食べ始めます。
「もうすぐ卒業ですね。尚輝先生とこうして学校でお話しできるのもあと少し。寂しいです」
「……」
　尚輝は黙々と料理を食べていました。
（卒業しても会ってもらう約束をしてるから学校以外では会えるんですけど……卒業という言葉を聞くとやっぱり寂しい気持ちもあります）
　時子は体育館を見渡して、会えなくなる人が多いのを実感します。
（あんまりしんみりしててはいけませんね）
　笑顔を先生に向けよう、と思ったとき。
「学校では会えませんが……忘れたりはしませんから」
「尚輝先生……」
　つぶやいた尚輝の言葉に、時子の胸は高鳴るのでした。

「これで、料理は全種類食べ終わりましたね……」
　つぶやいた紫苑は、まだまだ食べたりないようです。
「それじゃ、今度はもっと美味しくなる様な料理の組み合わせを考えながら盛り付けていきましょうか……どれも美味しかったから、どういう取り分け方するか悩みます♪」
　そう言って、二巡目を取りに向かうのでした。
　食べられて少なくなった料理も、まだまだ補充されていきます。