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- 00月00日生 00歳
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【進路・合格発表】寝子島に、サクラ咲くころ
◆サプライズ！
星ヶ丘のホテルに、贅沢な気分になれると評判のカフェがある。
「二人とも、合格おめ！」
３月頭のある晴れた日。心地よく木漏れ日差し込む窓際のテーブル席で、志波 武道は、窓側の席に並んで座る志波 拓郎と高梨 彩葉にお祝いの言葉を伝える。
「ありがとう、兄貴。自分も春から、兄貴と同じ木天蓼大学の、体育学部に進学することになったよ」
「学部は違うけど、大学で会えたらおにーちゃんうれしー！」
武道の言葉はいつも通りなようで、すこしカラ元気にも思える。
（……武道先輩、いつもよりアンニュイな雰囲気）
彩葉は、ちら、と拓郎に視線を送る。
拓郎も気になったようだが、敢えて口にする気はないようだ。
だったら自分も黙っていよう。……そう思っていると、武道が彩葉に水を向けてきた。
「彩葉ちゃんはお菓子作りの専門学校に合格したって？」
「うん、故郷の東京のほうにいい学校があって」
武道にとって、彩葉は弟の恋人でもあり、親友・高梨 煉の妹でもある。自分の妹、とまではまだ行かないが、煉が海外留学中ということもあり、彩葉のことも拓郎と同じように気に掛けて見守っていた。
彩葉がカバンから取り出した届きたてほやほやの合格通知を見せてもらって、武道はにこりと微笑む。
「ほんと、おめでとう。二人とも、今日はなんでも好きなの頼んでいいよ」
「そうそう。今日は兄貴の奢りだから」
「ありがとうございます、武道先輩。じゃあ遠慮なく」
彩葉はメニューで顔を隠すと、拓郎へ小さくウィンクを送った。
（あのこと、ブドー先輩にバレないようにしなくっちゃね）
拓郎も小さく頷く。
そう、さりげなく、さりげなく……。
「俺、このケーキとこれ、あとダージリンで」
「あっ、わたしもそのケーキがいいな」
拓郎と彩葉は、自分たちの企みが顔に出ないように細心の注意を払いながら、普通を装いつづけている。
「んじゃ、オレはホットコーヒーで」
武道は片手を挙げてスタッフを呼び、三人分まとめてオーダーをした。
その間に、彩葉と拓郎はまた目配せをし合う。
（もうちょっとで着くはず）
（兄貴には知られちゃいけない。まだ……）
――お互いに無事合格できたら何かお祝いをしようか。
志波 拓郎と高梨 彩葉の間にそんな話が持ち上がったのは、お互いの結果が出る前、２月の初めの頃だったか。最初は二人だけのつもりだったのだが、武道に「お祝い会やるんだって？」とカマを掛けられた拓郎が「何で知ってるの？」と口を滑らせたことから、「ほほー彩葉ちゃんとか、なるほど祝わせて！」と武道も交えてお祝い会をする話に発展。
兄弟のやりとりを少し申し訳ない気持ちで伝えると、彩葉は思案顔になって唇に人差し指をあてた。
『武道先輩も参加するの？』
『口が滑ってバラした。ごめん。……二人でじゃ、なくなっちゃって』
『ううん、違うの。武道先輩が来るなら、兄貴も呼んじゃおうかと思って』
彩葉の口元が、いたずらっこのそれになる。
『え……煉さん？ 海外に、いるんだよね？』
『今から言っておけば、一時帰国できると思う。あ、武道先輩にはナイショね！ サプライズだよ』
『……なるほど、わかった、兄貴を驚かせよう。あと高いの奢らせてやる』
『なんだかやる気、出てきたね。四人で祝う日を楽しみに、お互い頑張ろうね！』
『ああ……！』
そんなことがあっての今日である。
「高校の三年間って長いようであっという間だよな……」
弟たちの企みを知らぬ武道は、テーブルに届いたコーヒーカップをしみじみと傾ける。
「皆こうして自分の夢に進んでいくんだよな。ここからが大変だけど、二人ならきっと……」
武道はいい話をしているし、目の前には素晴らしいケーキの数々も並んでいるのだが、彩葉と拓郎はそれどころではない。
（視線をやっちゃ、だめだ）
足音を忍ばせて、そおっと武道の背後に近づいてくる人物がいる。
（笑っちゃだめだからね、拓郎）
（分かってる、でも、頬の筋肉がぴくぴく、して）
（集中！ 集中だよ、拓郎！ あと少しだけ！）
彩葉はテーブルの下で、拓郎の太腿をきゅっと抓る。
拓郎はケーキに視線を向け、表情でばれない様にするのに必死だ。
ホテルのカフェの、足音を吸収する高級そうな絨毯のお陰もあって、武道はまだ気づいていない。
「俺なんかの力が無くても……」
寂し気にカップを置いた武道の肩に、手が置かれる。
「久しぶりだなぁ、兄弟」
「……ん？ え！？」
目を剥く、というのがこれほど適切な場面もそうないであろう。
武道は振り向き、目をひん剥いてその人を見つめた。
「え？ れん、ちゃん……なん、で……！？」
星ヶ丘のホテルに、贅沢な気分になれると評判のカフェがある。
「二人とも、合格おめ！」
３月頭のある晴れた日。心地よく木漏れ日差し込む窓際のテーブル席で、志波 武道は、窓側の席に並んで座る志波 拓郎と高梨 彩葉にお祝いの言葉を伝える。
「ありがとう、兄貴。自分も春から、兄貴と同じ木天蓼大学の、体育学部に進学することになったよ」
「学部は違うけど、大学で会えたらおにーちゃんうれしー！」
武道の言葉はいつも通りなようで、すこしカラ元気にも思える。
（……武道先輩、いつもよりアンニュイな雰囲気）
彩葉は、ちら、と拓郎に視線を送る。
拓郎も気になったようだが、敢えて口にする気はないようだ。
だったら自分も黙っていよう。……そう思っていると、武道が彩葉に水を向けてきた。
「彩葉ちゃんはお菓子作りの専門学校に合格したって？」
「うん、故郷の東京のほうにいい学校があって」
武道にとって、彩葉は弟の恋人でもあり、親友・高梨 煉の妹でもある。自分の妹、とまではまだ行かないが、煉が海外留学中ということもあり、彩葉のことも拓郎と同じように気に掛けて見守っていた。
彩葉がカバンから取り出した届きたてほやほやの合格通知を見せてもらって、武道はにこりと微笑む。
「ほんと、おめでとう。二人とも、今日はなんでも好きなの頼んでいいよ」
「そうそう。今日は兄貴の奢りだから」
「ありがとうございます、武道先輩。じゃあ遠慮なく」
彩葉はメニューで顔を隠すと、拓郎へ小さくウィンクを送った。
（あのこと、ブドー先輩にバレないようにしなくっちゃね）
拓郎も小さく頷く。
そう、さりげなく、さりげなく……。
「俺、このケーキとこれ、あとダージリンで」
「あっ、わたしもそのケーキがいいな」
拓郎と彩葉は、自分たちの企みが顔に出ないように細心の注意を払いながら、普通を装いつづけている。
「んじゃ、オレはホットコーヒーで」
武道は片手を挙げてスタッフを呼び、三人分まとめてオーダーをした。
その間に、彩葉と拓郎はまた目配せをし合う。
（もうちょっとで着くはず）
（兄貴には知られちゃいけない。まだ……）
――お互いに無事合格できたら何かお祝いをしようか。
志波 拓郎と高梨 彩葉の間にそんな話が持ち上がったのは、お互いの結果が出る前、２月の初めの頃だったか。最初は二人だけのつもりだったのだが、武道に「お祝い会やるんだって？」とカマを掛けられた拓郎が「何で知ってるの？」と口を滑らせたことから、「ほほー彩葉ちゃんとか、なるほど祝わせて！」と武道も交えてお祝い会をする話に発展。
兄弟のやりとりを少し申し訳ない気持ちで伝えると、彩葉は思案顔になって唇に人差し指をあてた。
『武道先輩も参加するの？』
『口が滑ってバラした。ごめん。……二人でじゃ、なくなっちゃって』
『ううん、違うの。武道先輩が来るなら、兄貴も呼んじゃおうかと思って』
彩葉の口元が、いたずらっこのそれになる。
『え……煉さん？ 海外に、いるんだよね？』
『今から言っておけば、一時帰国できると思う。あ、武道先輩にはナイショね！ サプライズだよ』
『……なるほど、わかった、兄貴を驚かせよう。あと高いの奢らせてやる』
『なんだかやる気、出てきたね。四人で祝う日を楽しみに、お互い頑張ろうね！』
『ああ……！』
そんなことがあっての今日である。
「高校の三年間って長いようであっという間だよな……」
弟たちの企みを知らぬ武道は、テーブルに届いたコーヒーカップをしみじみと傾ける。
「皆こうして自分の夢に進んでいくんだよな。ここからが大変だけど、二人ならきっと……」
武道はいい話をしているし、目の前には素晴らしいケーキの数々も並んでいるのだが、彩葉と拓郎はそれどころではない。
（視線をやっちゃ、だめだ）
足音を忍ばせて、そおっと武道の背後に近づいてくる人物がいる。
（笑っちゃだめだからね、拓郎）
（分かってる、でも、頬の筋肉がぴくぴく、して）
（集中！ 集中だよ、拓郎！ あと少しだけ！）
彩葉はテーブルの下で、拓郎の太腿をきゅっと抓る。
拓郎はケーキに視線を向け、表情でばれない様にするのに必死だ。
ホテルのカフェの、足音を吸収する高級そうな絨毯のお陰もあって、武道はまだ気づいていない。
「俺なんかの力が無くても……」
寂し気にカップを置いた武道の肩に、手が置かれる。
「久しぶりだなぁ、兄弟」
「……ん？ え！？」
目を剥く、というのがこれほど適切な場面もそうないであろう。
武道は振り向き、目をひん剥いてその人を見つめた。
「え？ れん、ちゃん……なん、で……！？」
シナリオ
シナリオデータ
- 担当ゲームマスター
- 前回シナリオ
- シナリオタイプ（らっポ）
-
- ブロンズシナリオ（100）
- グループ参加
-
- 3人まで
- シナリオジャンル
-
- 日常
- 学校生活
- 定員
-
- 30人
- 参加キャラクター数
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
-
- 2024年03月31日
- 参加申し込みの期限
-
- 2024年04月07日 11時00分
- アクション投稿の期限
-
- 2024年04月07日 11時00分
