春のような日｜リアクション

春のような日

6．どきどき生配信

　白真白。17歳。背の小さな女の子。今日は家で、趣味のカードゲームに使うカードを整理中。
　整理と言いつつ、新しく買ってきてしまったパックもあるのでその開封も兼ねて。
「あ、そうだ！」
　真白は名案を思いついた。
「せっかくだから、開封動画でも撮ってみよっかな！」
　最近は動画配信でカードパックの開封動画をアップしている人も多い。ドキドキを共有できるし、レアが出た時には視聴者と喜びを分かち合える。逆に悲惨な結果になってもそれはそれでネタとして笑える。
　幸い、配信の専用ツールがなくてもスマホがあればお手軽に配信できるご時世だ。
　善は急げとばかりに、真白はスマホをセットして配信のためのアプリを立ち上げた。
　いきなり顔出しは不安だったので、一応首から上は映らないような画角で。
「よし……っと。こんな感じかな？」
　準備はOK。配信スタートだ。
「こんにちはー。配信とか慣れてなくてどきどきだけど、カードパックの開封をやってみるね！　あ、その前に自己紹介しなきゃか」
　きごちない進行でカードパックを開けようとしていく。
　と。ここで真白は異変に気付いた。
　自分は特に有名人でも人気配信者でもない、ただの学生だ。そのはずなのに、配信を始めて数分で視聴者の数がかなり増えている。
「えっえっ」
　なんでこんな急に？
　何か炎上でもしてしまったのかと一瞬不安になったけれど、そこは持ち前のポジティブ思考。
　あまり深くは考えず、見てくれる人が多いならそれに越したことはないと続けることにした。
「こんないっぱい見てくれると思わなかったから、ふつうに部屋着で配信始めちゃったよ−、ごめんね？」
　真白はカメラの角度を少し下げて、着ている服がより見えやすいように調節した。

　するとそこからさらに、目に見えて視聴者数が爆上がりしていった。
　もう皆さんお気づきだろう。
　白真白。17歳。背の小さな女の子。そして、胸の大きな女の子。
　世の男性たちが、彼女に大注目してしまったのだ。
「えーっ、もうこんなに！　すごい！」
　それを知ってか知らずか、真白はどんどん伸びていく視聴者数に驚きが隠せない。
『もっとアップで見せて！』
『部屋着かわいい！　もっと見たい！』
　視聴者たちは欲望に忠実なコメントをどんどん投下していく。本当、こういう時の男性の知能指数は3分の1くらいになってる。
　リクエストに応えていくと、それに呼応するように視聴者数も右肩上がりになっていった。
　この日の部屋着がよりによって露出の激しい、胸元が思いっきり見えるものだったのも勢いづけた理由のひとつだろう。露わになった谷の深さに男たちは迷い込み、神秘的にすら思えるレース素材のスカートはマタドールが持つムレータよりも激しく男たちの視線を集めた。
　露わになっている部分とレースで透けている部分。そのコントラストも、より興奮度を高めた。
「わー！　このカードほしかったやつだ！　手持ちのものと組み合わせるとね……」
　真白は配信を続けながら開封したカードについて熱く語ったりもしていたのだが、悲しいかな正直見ていた男性陣はほとんど耳に入っていなかった。目から入る情報に圧倒され、それどころではなかったのだ。男、こういう時の視野も3分の1くらいになるから。
「じゃあ、もしやることがあったらみんなまた見にきてねー！」
　一通り喋って満足した真白は、思った以上の反響にどきどきしつつ配信を切った。
「こんなことになるなんて思わなかったけど、楽しかったな」
　視聴者の層がだいぶ偏っていたことだけは気になったけれど、元々カードゲームは男女比が偏りやすい界隈でもあるのであまり気にしないことにした。ナイスポジティブ。
　真白の配信に2回目以降ははたしてあるのだろうか。今後の彼女の動向に注目である。

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