【期末テスト】赤点？留年？？春雷、四日間の死線＜物語編＞｜リアクション

【期末テスト】赤点？留年？？春雷、四日間の死線＜物語編＞

　有沢茉奈はテスト用紙の配られた机で頭を抱えていた。この教室担当の教師がテスト開始の合図を出したばかりなのだが。

　ゴロゴロピシャ！

　教室で小さく悲鳴が上がったような気がした。
「心配しなくていいから、テストを続けないさい」
　教師も少し困ったように呼び掛ける。
（雷もだけど、この停電！）
　冷え冷えとした空気、寒さもあり、コンディションは最悪だった。
　昨日は停電の影響で思いっきり遅刻するしメンタルは若干やられている。
「勘弁してよ……」
「有沢、私語は慎め」
　大きい呟きとして漏れていたらしい。
「すみません」
　謝りつつ、
（そうだ、カノンのこと考えよ）
　閑野カノン、茉奈最愛の彼氏である。彼のためだと考えれば頑張れる気がする。
（そう、こんな時はきっと、カノンが後ろから抱き締めてくれる）
「でへへ……」
　ぎゅっと背中を抱き締めてもらい、そのままの状態でばんばん数学の問題を解いていった。
　時々耳元で聞こえる（幻聴）

『茉奈、偉いよ。頑張って』

「ん。頑張る」
　やがて全問解き終わり、答案を見直した。
　つかれた、ちょっと目を瞑ろう。
　そう思い、完全妄想空間に突入。
　茉奈の周囲が一瞬ざわっとなった。

（んん。そんな、こんなところで？）
　優しい彼によゆうのなさそうな顔でぎゅっと抑えられた。というか、押し倒された。
（あ、待って。そこは）
　ぞくぞくする感覚。
『ダメ、かな？』
　妄想カノンに優しく問われ、
「いいよ。……カノンにあたしのすべてをあげる」

　茉奈の周囲は騒然としていた。顔を真っ赤にして、くねくねと体を動かす彼女の姿は少し異常だった。
「あ、有沢さん、熱でもあるんじゃ」
「さっき寒いって言ってたしね」
　などというクラスメート達の会話も聞こえていないようだ。
「おっほん。……有沢、調子が悪いなら保健室に」
「あたしは大丈夫」
「そ、そうか。なら静かに」
「わかった。声、我慢するね」
　教室内がしんとなった。教師が目をそらす。
「はい、残り十分だ。集中しろよ」
　教師の声賭けで、皆は試験に戻って行った。