にゃーにゃーにゃーとイタズラ魚｜リアクション

にゃーにゃーにゃーとイタズラ魚

【残る記憶と幸せ時間】

　次の日、連休な重なったこともあり、再び綾花と珪は、一緒に出かける約束を果たすことが出来た。
　今日の珪はもう、猫ではない。耳もしっぽも生えていない、普通の――否、普通よりもいつも大人で素敵な綾花の想い人。
　当然綾花にしてみれば、猫耳しっぽ自体は少し残念でもあったけれども、同時にこれで良かったのだという安堵もなくはない。

「こんにちは、綾辻さん」
　胸に響く優しい珪の声……本心を言えば、あと三日くらい猫耳しっぽを、もしくは猫でも良かった――という本音は、綾花の胸にこっそり静かにしまわれた。
「こんにちは、珪さん」
　いつも通りだ。
　ようやく、可愛いにゃんこであった珪が、大人の雰囲気を漂わせた凛々しい青年へと立ち返る。
　その姿には綾花も嬉しさのほうが勝り。しかし、綾花は少しいたずらっぽく微笑みながら、トンっと軽く足取りを珪の方へ向けて、ちょっとした質問を投げかけた。

「珪さん、昨日のこと憶えてますか？　にゃんこ珪さん可愛かったです。」
「え……！」
　それは『心当たりがある』という顔――珪の顔が一瞬で真っ赤に染まる。
　どうやらきちんと覚えているのに、恥ずかしさから内心指摘されなければ綾花には黙っておこうと、誤魔化そうとしていた事がその様子からは窺えた。
　綾花は小さくもはっきりと幸せと嬉しさを交えた笑みを刻んでみせた。あんなにも可愛らしい珪との記憶が共有できたなんて、本当になんて幸せな日だったのだろう。
　そして、近づくついでに顔の側、誰にも聞こえないようにそっと耳打ちをする――

「――にゃんこみたいにもっと甘えてほしいです」
「……っ。僕には、思っていた以上に、困った教え子がいるようだね……」
　真っ赤に照れて顔を隠すように告げる珪に綾花がそれすらも可愛く思えて微笑んで見せる。
「それでしたら、卒業したらにゃんこみたいに甘えてもらえますか？」
「……！」
　どうやら、珪にとってもあの瞬間は、まんざらなものでもなかったらしい。
　完全に恥ずかしさに撃沈沈黙した珪に、綾花は幸せいっぱいに綻ぶ華のように破顔して、珪の手を取り今日のデートの目的地へと歩き出した。

　――今日も、また、素敵で幸せな一日でありますように――

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あとがき

担当マスター：斗々
ファンレターはマスターページから！

大変お世話になっております。この度、シナリオを担当させていただいました斗々と申します。

この度は、綾辻綾花様と猫化した早川珪先生とのお時間をとのリクエストを頂戴し、誠に有難うございました。
執筆中、特殊でありながらその幸せなお時間をどのように過させていただけるようにするかを、只ひたすらに考えておりました気が致します。
内容につきましては、せっかくの個別あとがきがございますとの事で、是非ともお伝えの仔細はそちらで行わせていただければ幸いでございます。

それでは、この度はご依頼のほど誠に有難うございました！

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