深夜、夜も更けきった人気もないエノコロ岬。
突如現れた黒い大岩から、金茶の髪をした一人の青年が前触れもなく姿を現した。
「……大分慣れたとはいえ。ここは、もはや複数の次元が入り乱れた超時空ニャね……しらゆき、千年湖から『イタズラ魚』が逃げたのはここで間違っていないかニャ?」
若い見た目に反して不思議と目を引く威圧感を滲ませながら、青年
シリウス・グランは周囲の草原と背後に広がる黒い海を見渡して、ひとりシリウスの後に続いて寝子島に降り立った、白の目隠しをした自分よりもうら若い銀髪の少女に語りかけた。
「は、はい、おうさま。ここに飛び込んでいったのには間違いないかと……わたし見えなくて申し訳ありませんにゃ」
「安心するニャ、あの魚半透明だから離れてしまえば殆どの存在の目には見えないニャ。それに、もうおうさまじゃ……まあ、いいニャ」
謝罪されたシリウスは少々バツの悪そうにしながらも、猫の足跡マークの入ったトートバッグを探るように手を入れる。
「さて、しらゆき。この島に来たからには『ひとらしく』喋るとするか。あのイタズラ魚は、この世界に来たら何をするか、お前の目には『視える』か?」
「はい。数日後の早朝から手当たり次第、この島のひとびとに『猫耳としっぽを生やして、最終的にただの猫にしよう』としています」
「……魚のくせにやることがえげつないニャ、焼き魚にして食ってや……おっと。それなら早急に捕まえる必要がありそうだ」
バッグを漁って、シリウスが取り出したものは中身が異次元と繋がっているのかと思うような、スラリとした装飾の長杖ひとつ。
「幸い、この島の2月22日の暦は『ねこの日』と言って、この世界で祭りをやりたいと言っていた民がいたな。イタズラ魚は賑やかな所が好きだから、ここを会場にしておびき寄せた所を捕らえよう。この神魂…と云ったものを使ってやれば吾輩でも崖から落ちない程度の立地整理と客引き程度はしてやれる」
「しらゆきは準備と、異常事態だから、と中立共存の会に上手く言っておいてやってくれ。吾輩は、あれは煩くて嫌いだ」
「はい」
落ち着きを払って、そう告げたしらゆきが去った後。
シリウスは、取り出した魔法の杖をトンと大地静かに打ち付けました。瞬間、エノコロ岬の崖には如何にも現実的ながらも木で出来た柵ができ、草原はそのままに荒れた岩地部分は整地され、休憩所まで用意された古き良き寝子島の屋台が、一瞬でその場に模倣出現したのである。
そして、来たる2月22日――
『にゃーにゃーにゃーの日に祭りは如何ですか? 猫耳、猫しっぽがついている方も大歓迎です!!』という、若干謎のポスターがあちこちに、まるで魔法のように張り巡らされた。
それは、
「な、何だろう、これにゃ……? にゃ!?」
「え――! け、珪先生に猫耳としっぽが……!!」
街に一緒に買物に出て、突如生えた猫耳しっぽと共に語尾に『にゃ』が付き始めた
早川 珪と、
綾辻 綾花の目にも留まる所になったのである――
こんにちは、MSの斗々と申します。
この度は、プライベートシナリオSのご依頼誠に有難うございました!
ご依頼主様であられる綾辻 綾花様におかれましては、祭りを含め、寝子島の全域にて行動可能です。ご自由にアクションを掛けていただければ幸いでございます。
概要
◯犬と猫が二本足で歩く『いぬとねこの世界』がありました。
様々な経緯とともに、それは次元の干渉により世界がちょくちょく寝子島が繋がってしまい、ついには確立したルートまで発見されてしまいまいした昨今。
◯その『いぬとねこの世界』にある、ねこ側に近い『千年湖』と呼ばれる湖から、大きな一匹のほぼ半透明な『イタズラ魚』が逃げ出して、寝子島をみんな『猫耳としっぽを生やして、いずれ猫にしてしまおう!』と計画し、そのまま実行に移されてしまいます。
◎早川 珪先生も、綾花さんとの外出中に、その被害に遭い、見事に【猫耳しっぽ、語尾に「にゃあ」】となってしまいました!!
(現状ではまだ被害は少なく、早川先生の存在は目立つかも知れません)
◯このままでは皆、猫にされてしまいますが、その状況も原因も普通の寝子島市民には知らされておりません。寝子島に降りて、ひとの姿となったねこたちは、全て祭りを盛り上げることでイタズラ魚を捕まえて、片を付ける方針のようです。
(その為、現象は何も手を付けなくとも、一晩で全て終結致します。
早川先生の猫化もそれに伴い1晩で終了となります)
綾花様におかれましては、寝子島での日常を自由に過ごしていただくもよし、お祭りに参加しイタズラ魚に関与するもよし、お祭りのみを楽しまれてもよし。何をやってもご自由にお過ごしいただけます!
存分に、現状の中から行動を起こされたい事をアクションに熱く語っていただければ幸いでございます。
NPCについて
(※アクションにてご指定いただけた場合のみ、登場するNPCです。必須ではありませんので、アクションに応じましてお気軽にどうぞ)
◯シリウス・グラン:半隠居の『いぬとねこの世界』えらかったらしい、金茶色の髪をしたねこ。
元は二本足のねこですが、若く見えても年齢不詳。今は寝子島に降り立った関係で人の姿をしています。
◯しらゆき:シリウスの付き人ならぬ、付きねこです。目が見えない代わりにある程度の『特定の事件に関する先行き』を視通す事が出来ます。(ミラとは原理が違うようで別物の能力です)
今は、高校1年生くらいの少女の姿をしています。