流氷がやってきた！｜リアクション

流氷がやってきた！

◆流氷の美しさ

　綾辻綾花は早川珪先生と待ち合わせて寝子ヶ浜海岸に向かっていた。いま海岸には流氷が押し寄せており、ちょっとした話題になっている。

「流氷を見るの楽しみです。珪さんは実際に流氷ってみたことありますか？　私初めてかも」

　綾花は楽しみな気持ちが抑えきれず、わくわくしていた。２人は手を繋いで海岸を歩く。噂の流氷は海岸の砂浜へ乗り上げて、埋め尽くすほどに押し寄せている。

「わあ、すごいですね。乗れたりするんでしょうか？」

　おそるおそる足を伸ばしてそっと乗って、しばらく立ち止まって様子を見る。どうやら大丈夫そうだ。

「珪さんも乗ってみませんか？」
「ああ」

　綾花が手を差し出すと珪先生はその手を掴んで同じ氷の上へ。氷に厚みがあるおかげか、２人乗っても大丈夫だった。綾花はスマホを取り出し、珪先生とのツーショットを収める。顔が思った以上に近くてドキドキする。

「氷がキラキラ輝いて綺麗ですね」
「そうだね」

　流氷の上から何枚か写真を撮って２人で眺める。すると流氷を掻き分けるように進む船が見えた。どうやら遊覧船のようだ。

「あれは砕氷船かな」
「珪さん、一緒に乗りましょう」

　珪先生の手を引いて綾花が駆けだした。観光砕氷船『パリンコ号』は氷をがりがりと砕きながら海の上を走る。一面真っ白な流氷のなかを進む迫力と振動が伝わってくる。

「氷を砕きながら進むのを見るのも楽しいですね」
「この迫力もなかなかすごい」

　音と振動を感じながら２人で景色を眺める。氷の上から見た景色とはまた違った趣がある。

「この景色を寝子島で見れるなんて感動です」
「寝子島まで流氷がくるなんて珍しいしね」

　綾花は珪先生が居るからこそ、この景色が一層綺麗に感じられた。風が冷たいから彼に寄り添うと温かさが伝わってくる。ふと船が大きく揺れた。大きな流氷にあたったのだろうか。綾花がバランスを崩すと珪先生がとっさに受け止めた。

「大丈夫かい？」
「だ、大丈夫です」

　思わずぎゅっとしがみついてしまい、ドキドキが止まらない。そのまま腕を絡ませて１時間ほどのクルーズを終えた。

「こういうデートもいいですね」
「ああ」

　彼も楽しんでいたら良いな、と綾花は密かに思った。

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