遊びに行こう、眠れない夜に誘われて｜リアクション

遊びに行こう、眠れない夜に誘われて

　白石龍樹布団の中で眠れなくて、ゴロゴロしていたところ、窓を叩かれた。
　恐怖などはなく、ガラス戸を開けると、白い髪の少年が手を振っていた。
「やぁ、龍樹」
　名前を呼ばれ、はっとする。見慣れない顔だ。絶対に知り合いではない。
「おまえ、誰なんだ？　なんで俺の名まえ知ってんだよ」
　眠れないなら遊びに行こうと誘われ、少し迷った末に彼についていくことにした。
　夜の遊園地も楽しそうだが、今回は温水プールに行くことになった。気付いたら水着姿で薄暗い流れるプールの前に立ってた。
　温水プールの天窓から降り注ぐ月明かりでぼんやりと明かりが灯っている。
「あれ」
「夜空を滑ると一瞬だっただろう？　さぁ、何をするのも自由だ。ライトアップでもするかい？」
「お、おう。ていうか、名前教えろよ！　１人じゃつまらないし」
　少年はキョトンとして、
「はは。僕はシロトだ。よろしく」
「んじゃまぁ、流れるプール、どっちが早く回れるか勝負だ！」
「あ、待てよ」
　追いかけ始めるシロトは、パチンと指を鳴らした。
　夜のプールはルール無用、流れるプールに龍樹が飛び込んだ瞬間、プール底のライトが一斉に点灯した。
「！？　ぷはっ」
　流されながら水面に出た龍樹は驚いて目を瞬かせる。
「す、すげー」
　水が光っているように見える。
「先に行くぞ」
　波しぶきが立って、龍樹の横をシロトが泳いで行った。
「あ！　ずるいぞー！」
「競争なんだろ」
「絶対追いついてやる！」
「さぁ、どうかな？」
　シロトは流れるプールの途中にある、急流ポイントに飛び込んだ。
「うおっ、早ッ」
　龍樹も後を追いかけたので、一期に流れが加速したように感じた。
　水に流されながら、どこからともなく現れた浮き輪につかまる。
「はぁはぁ、ずるいぞ！　シロト。　こんな仕掛けあるなら」
「最初に抜け駆けしたのは、龍樹だろ？　おあいこだ」
「うう、何も言えねぇ！」
「はは」
　龍樹とシロトは浮き輪に捕まったまた、急流プールを流れる。視界を流れるプールサイドの景色は暗く静かなのに、プールの中やプールのそばは華やかなライトアップがされている。
「やっほぅ！」
「龍樹、しっかり捕まってないと、まずいぞ？」
「へ？」
　シロトが前方をさす。　
「！？」
　見るとプールの先が存在してなかった。
「グライダーだ」
「うおっ」
　浮き輪にぎゅっと捕まった瞬間、落ちる感覚と浮遊感に襲われる。
「うわぁああっ」　　
　ゆうに、３階から１階に滑り降りたような感覚だったが、目を開けると、
「あ」
　最初の流れるプールの入口に戻ってた。
　流れは緩やかに戻っている。
「スリルあるだろ？」
「ああ、めっちゃ楽しかった！」
　もう１週しようということになり、緩やかな流れるプールをシロトと流れてゆく。
「そういえば、寝られないってことは何か悩みでもあるのか？」
　不思議な少年シロトの、普通の質問に笑ってしまった。
「今日はたまたま……あー、でも最近、母ちゃんの様子がおかしくてなぁ。いい年して人形買ってきたり、おなか押さえてボーッとしてたりするんだよな。コーネンキってやつか？」
「ふーん。生命エネルギーを感じるな」
「は？」
「いいやなんでも。それより、そろそろ眠くなってきたんじゃないか」
「……眠くなってきたらおしまいか？」
「ああ、眠くなるまでな」
「そっか」
　すでに眠さはあるが、それよりも彼との遊びが楽しくなって来てしまった。きっとこの夜に分かれたら、二度と会えないと思うから。
「よし！　それまで遊ぶぞー！」

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