文房具怪獣がやってきたぞ！｜リアクション

文房具怪獣がやってきたぞ！

◆柔軟な発想

　学校の帰り道。制服姿で歩く月原想花の前に現れた存在に驚いた。右手にホチキス、左手にはさみ。その他色々な文房具で構成されていた。

「……怪獣？」

　それが何者かは分からないが、なにかの撮影というわけではなさそうだ。

（これと戦えって？　無理）

　心のなかで即答すると、すぐに踵を返して全力疾走。だが怪獣は想花の背中を追いかけてくる。なぜ追いかけてくるのか疑問を挟む暇も無く、ただ走る。必死に走っていたらなにかに躓いて転んでしまった。

「いった……」

　打ち身と擦り傷で痛みが走る。大けがというわけではないが、遠くまで逃げ切るには不安がある。そのとき、カバンから飛び出たペンケースが光った。

「これはいったい……」

　ペンケースを開けると、なかのシャーペンや定規、消しゴムなどが淡く光っている。もしかしたらこれらは武器として使えるのではないか。想花は直感的に感じ取った。
　定規を握って武器をイメージすると剣に姿を変えた。同じ要領で消しゴムは盾に変化した。

（これで切りつければおそらくダメージは与えられるが……）

　怪獣を物陰から見上げる。先ほど転んだおかげで想花を見失ったようで、首を動かして探している。この相手に接近戦を挑むのはつらい。大きさがあまりに違うし、両手のはさみとホチキスは脅威だ。

（あのホチキスが飛び道具になる可能性もあるし、こちらも飛び道具がほしい）　

　ペンケースを改めて確認する。注目したのはシャーペンだった。

（もしかするとシャーペンはミサイルとして使えるかも？）

　ついに怪獣が想花を見つけて迫ってくる。
　とりあえず適当に逃げ回りつつ、十分に距離を取ろうとする。定規の剣で威嚇しつつ、飛んでくるホチキスの針は消しゴムの盾で防ぐ。そしてはさみのリーチが届かない距離で怪獣を真正面に捉える。

（今なら狙える……！）

　彼女は剣を置き、シャーペンを取り出すとダーツのように構えた。そして怪獣に狙いを定め、鋭い一投を放つ。想花の手を離れたシャーペンは次第に大きくなり、速度を持つミサイルとなって飛んでいく。怪獣が両手で防ぐ前に胸元に刺さると激しい閃光とともに爆発した。
　致命的な一撃を受けた怪獣はうめき声をあげながら消えていった。
　倒すことができたと分かると、想花は安堵してその場に腰を下ろした。

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