文房具怪獣がやってきたぞ！｜リアクション

文房具怪獣がやってきたぞ！

◆新手のアトラクション

　稲積柚春とウォルター・Bは休日デートを楽しんでいた。そのときふと、視界の端に巨大ななにかが見えた。気になって行ってみると、５階建てのビルほどはありそうな怪獣がいた。

「これはAR？　それとも巨大モニターの広告？」

　目の前の異変に対して柚春はそんな感想を抱いた。最近の撮影は凝っているし、３Dサイネージの類としか思っていない。ウォルターも感心して怪獣を見上げている。

「よくできてるねえ」
「ね。渋谷で見られるとは聞いてたけど、寝子島にもできたんだ！」

　よくみると左手にホチキス、右手にハサミ。胴体には消しゴムが使われており、他の部分も文房具でできているようだ。

「コンセプトは文房具のロボット？　怪獣かな？　小さい子が喜びそうだね」
「インパクトはあるかもしれないねえ」
「ワットはロボットとか好きだった？」
「それなりにはね」

　文房具メーカーのCMか、あるいは戦隊シリーズのなにかか。２人とも展示品をみるような気持ちで怪獣に近づく。

「どんなパーツで出来ているか見てみよう」

　観察しようとしたら怪獣も２人に気づいて近づいてきた。

「こっちがアクションをするとリアクションをしてくれるの？　凄いね、ゲームみたいだ」
「本当によくできてる」
「文房具を武器にできるなら、ワットはもちろんチョークだよね」

　そんな話をしていて、ふと鞄のなかから淡い光が漏れていることに気づいた。確認するとペンなどの文房具だった。

「これを武器に戦えるってことじゃないかな？」
「でも僕はデートのつもりだったからそんなに文房具は……」

　そのとき、香り付きのボールペンが目に付いた。気に入っているものだし、香りがいつもより素敵に感じた。

「これなら戦えそう」

　柚春は自信をもって答えた。ウォルターもボールペンを構えて怪獣と対峙する。彼女が空間に陣を描くと、アロマの香りが漂う。ラベンダーで怪獣をリラックスさせ、フランキンセンスで戦意喪失を図る。
　様子を窺っていると、怪獣の動きが鈍くなっているのがわかる。これならかなり攻撃が通りやすい。さらにローズマリーで味方の集中力を上げ、ペパーミントで攻撃力も向上させる。ウォルターはボールペンに集中し、怪獣を視界に収める。
　鋭い視線が怪獣を完全に捉えると同時に、矢のようにペンを放つ。彼の手元を離れたペンは威力を増し、アロマオイルで防御のできない怪獣に突き刺さった。
　怪獣はうめき声のようなものをあげると、消えていった。

「ふふ、ヒーローになったみたい！」

　柚春はゲームをクリアしたような気持ちで話す。

「ところで、結局これはなんの企画だったんだろうね？」
「なにかの宣伝だったのかもねえ」

　知らないうちに寝子島を救った２人はデートの続きを楽しんだ。

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