文房具怪獣がやってきたぞ！｜リアクション

文房具怪獣がやってきたぞ！

◆共に戦う

　綾辻綾花と早川珪先生は２人でデートを楽しんでいた。次はどこへ向かおうかと話していると、綾花の視界になにか大きなものが映った。

「なんだろう？」

　珪先生の手を引いて、さらに近づくと５階建てのビルくらいの怪獣がいた。右手はホチキス、左手ははさみ。他にも様々な文房具が組み合わさっている。

「なにかの撮影でしょうか？」
「そうかもしれないね」

　はじめは見学するような気持ちで２人とものんびりしていた。しかし怪獣の暴れている様子が激しく、建物を壊し始めたのを見て流石に綾花はおかしいと感じた。

「珪さん、このままじゃ寝子島が危ないです」

　彼も危機感を覚えたのだろう。綾花の言葉に小さく頷いた。しかしどうすればいいのだろうか。そう思っていると、自分たちの持っている文房具が淡く光っているのに気づいた。

（これを武器にして戦えるかもしれません）

　彼女はそう直感した。珪先生愛用の万年筆も武器になりそうだ。綾花は本を盾に、シャーペンを銃に変えた。シャーペンを構えると芯を弾丸のように放って攻撃する。使い慣れた文房具は手に馴染んで、武器としても使いやすい。怪獣も怯んでいてダメージが及んでいることが分かる。珪先生も万年筆をロングソートに変え、攻撃を仕掛ける。

「珪さん、人の少ない場所に誘導しましょう」

　彼は頷いた。２人とも少しずつ後退し、逃げるように思わせて戦いやすいところへ誘導する。目指すのは人が少なく、かつ幅が狭い場所。そこなら体の大きい怪獣は動きにくいはず。
　誘導に成功すると綾花はのりを取り出して銃に変えて何発も発射した。それが怪獣の足に当たると地面に貼りついて剥がれない。その隙をついて珪先生も攻撃する。しかし怪獣もやられてばかりではない。唸り声をあげてハサミの腕を振り上げた。想像以上の迫力に綾花は思わず腰が抜けてしまった。そのままハサミが振り下ろされ、刃先が眼前に迫る。

「危ない！」

　珪先生が割って入り、ロングソードでハサミを受け止める。

「大丈夫かい？」
「……大丈夫です！」

　綾花は心配させないようにすぐに立ち上がった。守られるだけではなく、守りたいから。
　彼女はシャーペンの銃で怪獣の気を引きつけて隙が生まれるのを待つ。珪先生は彼女を信じ、怪獣の背後に回る。怪獣が綾花を視界に捉え、大きく右手を振り上げた。

「いまです！」
「ああ！」

　珪先生は走り出し、怪獣との距離を一気に詰める。防御が取れない今が最大のチャンスだ。振りぬいたロングソードは怪獣の体を両断した。各部位の文房具が外れていき、やがて消えていった。完全に倒したことを確認すると、綾花は珪先生のもとに駆け付けた。

「やりましたね、珪さん！」
「ああ、綾辻さんのおかげだよ」
「そんなことないですよ」

　日常が戻ってくると、綾花は珪先生と手をつなぐ。

「これでデートの続きができますね」
「そうだね」
「珪さん、かっこよかったですよ」

　綾花は照れながらそう呟いた。

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