おいでませ人間さま、霊界弾丸ツアー｜リアクション

おいでませ人間さま、霊界弾丸ツアー

稲積柚春は久々のウォルター・Ｂとのデートに霊界ツアーを申し込んでいた。知り合いの多い寝子島だとどうしても人目が気になることがあるので今回は気にせず遊びに行けそうな場所を選んでみた。
　ガイドらしい少女に聞くところに寄ると、様々な観光スポットがあるらしい。
「へぇ〜。こういうの、迷うよねぇ」
　そう言いつつ、ウォルターも好奇心を抑えているようだ。
「霊界ツアー……ではあるけど」
　柚春自身もウォルターもホラーは苦手なのだ。本格的な場所よりも、
「ワット、遊園地とかどう？　ホラー系のアトラクションだけど、まぁアトラクションだから」
　怖いのを楽しむというスタンスは嫌いではない。
「うん。良いねぇ〜」
　ガイドさんは遊園地への道を案内してくれることになった。
「カップルさんには二人で回って頂くのが良いかと思います〜。ガイドが必要ならもちろん致しますけど、いかがですかー？」
　柚春とウォルターは顔を見合わせた。
「あの、ワット、僕はそのデート、だし」
「だよねぇ」
　ウォルターはにっこりと笑った。
「中は自分達で周るから、大丈夫ですよ」
　ガイドさんは親指を立てた。
「了解しました。私のおすすめは浮遊霊の街をオープンカーで疾走するアトラクションです。是非是非」
（それは面白そう）
　少し寂れたような演出の遊園地の前でガイドさんと分かれ、園内へ。
「あ、結構雰囲気が」
　街灯の明かりが少ない、洋風のゴーストタウンの様相だ。
「あれ、怖い？」
　ウォルターに聞かれ、はっとする。いつの間にか、彼の腕に手を回していたのだ。無意識だった。
「あ、ごめんワット」
「いいよ。ちょっと肌寒いしねぇ」
　ウォルターはそう言って、腕に力を込めた。
　やがてガイドさんのおすすめ、浮遊霊の街なるアトラクションの前へ。
　係員の話を聞いた後、オープンカーに乗り込んで出発したのだが、
「わ！　凄い！」
　半透明の浮遊霊が飛び交う道を疾走。
「お、避けなくても良いみたいだね！　でもこれは、おっと！」
　オープンカーのハンドルを回しながら、ウォルターが目をキラキラさせていた。疾走感と風がとんでもなく気持ちいい。
「あっ」
　急ハンドルに、柚春が思わず声を出した。ウォルターの肩に自分の肩がぶつかってしまう。
「ごめんごめん。大丈夫かな？」
「僕は大丈夫。！」
　片手ハンドルでウォルターは柚春のもう一方の肩に手を回した。
「シートベルトだけだと危ないからね」
　体を寄せられ、顔が異様に近い。肩を抱きながら運転など、普通なら危ないところだが、ハンドル操作はある程度制御されているので問題ないようだ。
「わっ」
「ひゃっ」
　水しぶきが顔にかかり、お互い笑う。
「もう、今の不意打ち！」
「ああは、一番びっくりしたかもねぇ」
　完全にドライブデート（浮遊霊付き）だ。
　アトラクションが終わる頃にはすっかり体が温まっていた。
　近くのフードコートでお化けソフトクリームと呪いのチョコアイスクリームを買って食べながら遊園地内を回る。
「さて、次は」
　ウォルターはパンフレットを見ながら考えている。
「ワット、チョコアイス味見する？」
「ああ、ありがとう」
　フードコートでもらったプラスティックスプーンですくって彼に渡す。
「うん。美味しいねぇ。　じゃあ僕のも」
　最後まで、遊園地デート（霊界版）を楽しんだ。
（来て良かった）

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