おいでませ人間さま、霊界弾丸ツアー｜リアクション

おいでませ人間さま、霊界弾丸ツアー

桜井ラッセルは、突然霊界ツアーに誘われて、「千年鳥居」の前にいた
「はー。これが鳥居かぁ」
「素敵でしょう？」
　少女の姿をしたツアーガイドさんがにっこりと笑う。
　赤い鳥居がきれいに並び、奥の奥までずっと続いているようだ。穴のようになっているせいか、ずっと眺めていると吸い込まれそう。
「なんか、奥から出てきそうだな」
　雰囲気も静かでひんやりとしていて、神聖な場所というイメージだ。
「ここに並ぶ鳥居は千以上はあると言われていますよ！」
　と、その時。
　とんとんと肩を叩かれた。
　ガイドさんではない。慌てて振り返る。
「一般のお客様かと存じますが、道をお譲りいただけますか？」
　黒と白の袴姿の男性がそう言って頭を下げた。
「うお」
　彼の後ろにはいつの間にか、人の列が出来ていて、一際目を引くのは、純白の着物を来た女性と白い袴姿の男性だ。
　ラッセルに対し、頭を下げる。
「あ、すみません。失礼しました」
　ラッセルは慌てて脇道へ。どうやら結婚式のようだ。
「はわわ、綺麗ですね」
　ガイドさんが嬉しそうに言う。
「こう言う場所で……雰囲気にマッチし過ぎだな」
　思わず、知り合いの女性達の白無垢姿を想像する。
　何故か最後に、服装のイメージが崩れないはずの晴月を思い浮かべてしまい、慌てる。
「いや、何考えてるんだよ、俺」
「んん？　どうされました？」
「なんでもな」
　ふと気づく。後ろ姿の結婚式の主役と参列者達の腰の辺りに黄色っぽいふさふさが飛び出ているのだ。
「……ん？」
　胸がざわざわしたのだが、
「なんとかの嫁入りってあるだろ？　あれだと思うぞ」
　列の最後尾にいた参列者が声をかけてきたのだ。見知った顔に面食らう。
「あ。あー！！　千来てたのかよ！？」
　参列者ではなく、ただ後ろを歩いてきただけのようだ。そしてお隣には貞子似のお姉さんが。
「ぎゃー！　な、なんつうお連れ様だよ」
「失礼なやつだなー。このしたたかな良さが分からねぇとは」
「いやいやいや、良さの前に恐怖の感情が、だな」
　親しげなやり取りにガイドさんが首を傾げる。
「あらま、お知り合いですか？」
「あ、ああ。まぁ」
「なるほど、三角関係ですか」
「なんでだよ！」
　ラッセルはツッコミを入れつつ、
（貞子似のお姉さんは趣味じゃないんだって！）
「あー、ツアー中？　あれ、晴月と一緒じゃねえの？」
　先程の想像の姿に、視線をそらす。
「まぁ、いつも偶然だし今回はな」
　
　せっかくなので、「瑠璃紺逆さ屋敷」に一緒に行くことになった。もちろん、お姉さん同伴であるが。
　空中に浮遊する屋敷の中のデタラメ感はかなり強く、ほぼほぼ重力無視の動きや逆さになった部屋などもあり、非常に迷う。
「いや、面白いな」
　この浮遊感はろっこん使用時の感覚を思い出す。千はというと、お姉さんとちょっとイチャイチャしていた。
「確かにこれは寝子島じゃ見られないなぁ。どう？　お姉さん」
「……」
　こくりと頷く彼女。
「千……」
　デートの雰囲気を作るのがうますぎる。
　屋敷の仕掛けを楽しんだ後、無事に脱出、ツアーは終了となった。

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