【進路・受験】君等の道、未来のために｜リアクション

【進路・受験】君等の道、未来のために

選んだ道に後悔なんてしない

　時をさかのぼり――昨年の秋。
　鴻上彰尋は七夜あおいと、色づきはじめた並木道を歩いていた。
「進路か……」
「進路ね……」
　彰尋もあおいも、そのときまだ悩んでいた。
「彰尋くんは、どういう方向を考えてるの？　演劇？」
「そうだね。演劇は本格的に学んでみたい。高校の演劇部は家庭の事情で叶わなかったけれど、その分大学に入ったら打ち込みたいなって……。母さんや兄さんに話したら喜んで了承してくれたのは嬉しかったな」
　彰尋の表情がやわらかく微笑む。
「となると、演劇系の学部か学科があるところにするの？」
「そうだね。悩んだけど、家族から離れすぎない距離で、独り暮らしが可能で、演劇を勉強出来るところを探していたらマタ大が一番理想に近いのかなって」
　家族思いの彰尋らしい考えをきいて、あおいは納得したように微笑んだ。
「あおいさんは介護や福祉の道？」
「うん。私は推薦を狙っていきたいと思ってて。ほら、うち兄弟多いし、お金のことであんまり家に負担をかけられないから、学費免除とかあるとありがたいんだよね」
「その悩みはすごくわかるよ」
　彰尋も四人兄弟で、そのあたりはあおいと共通点がある。家族はどんな選択でもきっと応援してくれるだろうけれど、お金の面で苦労させて、下の兄弟たちが選びたい道を選べない、なんてことにならないようにしてあげたい。お金は無限ではないのだから。
「あおいさん、このあと時間あるならカフェに行かない？　スマホで調べてみようか。あおいさんが考えている候補の学校周りの情報とか評判とか、学費の減額だけじゃなく、奨学金制度とか併用でもっといい条件の学校がないかとか」
「え、……一緒に調べてくれるの？」
「ん。俺自身もまだ他にいい候補がないか探したいし……仕方がないと決めたってわけじゃなく、自分や家、様々な事を考えて選んだ学校なんだって自信をもてるようにさ」
　あおいはしばらく彰尋を見つめて、それから深く頷いた。
「そうだね。後悔しないように。よく調べよう！」
　
　いっしょに悩んで、いっしょに調べて。

　それからしばらくして、秋が深まったころ。
　あおいは九州の福祉系専門学校に推薦で合格が決まり。
　彰尋も木天蓼大学の芸術学部にＡＯ入試で合格した。
　お互いの合格が決まったあと、あおいと彰尋は、いっしょに学校について調べたカフェでお茶をした。
「彰尋くん、念願のマタ大芸術学部合格、おめでとう！」
「ありがとう。あおいさんもおめでとう」
　紅茶のカップで乾杯をする。
「遠くなってしまうのは寂しいけれど……後悔はない。充分悩んだから。それを誇っていいんじゃないかな」
「うん。頑張ったよね、私たち」

　選んだ道に後悔なんてしない――そう胸を張って、春を迎えよう。

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