【進路・受験】君等の道、未来のために｜リアクション

【進路・受験】君等の道、未来のために

君等の道、未来へ

　共通テストが終わってしばらく経った、ある晴れた休日のこと。
　旅鴉月詠は星ヶ丘寮の中にある海を望む自部屋――アトリエ『魔女の座』にいた。
「ここにいられるのもあと僅かだしね。すこしずつ整理をしておかなければ」
　月詠は高１の時にクラス担任の泉竜次に伝えた通り、芸術の道を貫くべくマタ大を受験した。迷いはないし、テストも万全であったと自負している。
「大学では高校３年間で磨いた技術を活かして、より磨きをかけて行きたいね。コネクションも作れるだろうしな。これまではフリーマーケット程度であったが大学生ならば更に大きな個展を開く事もできるはずだ」
　試験などただの通過点でしかない。
　そんな月詠にとって、目下最大の懸案事項は、
「卒業作品、どうしようか」
　である。
「奇抜なものは控えておきたいか……寝子高に寄贈したいからね。後輩の制作のサンプルにもなるだろうし」
　月詠はアトリエの中を歩き回る。
　ここに来て増え続けた制作物で、アトリエの中はすっかり手狭だ。
「高校の３年間で私の作品で手狭になるだろう、という見込みはやはり当たっていたね」
　星ヶ丘寮は当然ながら、高校を卒業したら出なければいけない。
　すこしずつ片付けて、ここを引き払う準備をしなければならないだろう。
　メイド姉妹に準備させて、星ヶ丘に新アトリエを構えるつもりでいるが、すべて入りきるだろうか。
「おっと、思考が逸れた。卒業作品のことを考えていたんだったね。そうさな、今の寝子高の風景は絵に残しておくとして……あー、何か描きたい。猫とかサンマとか。学校のどっかの壁に絵を描かせてもらえないだろうかな。美術の先生方に相談してみるかな」
　ののこや現理事長も描いて残しておくべきかもしれない。テオやミラもか？
「１つ２つほど星ヶ丘に寄贈する作品も見繕っておきたいね」
　かつて作った猫の置物を手に取りながら、月詠はそんなことを思考した。
「やはり作るか。絵画より彫像がよろしいだろうか？」
　彫像ならどんなモチーフがいいだろう。この私、アトリエの魔女か？　――それはいくらなんでも自己愛が過ぎる。だったら、フジコ先生の裸体？　――アートとしては成立しそうだが恐怖におびえる学生が出てはいけない。だとすると……。
　月詠はあれこれと脳内でシミュレーションを繰り広げる。
　作りたいものがいっぱいだ。
　それに対して、大学の二次試験もあり、残された時間はあまりに少ない。
　いや、と首を振り、月詠は窓を開けた。
　青い海が瞬いている。
　海渡る風はまだ冷たいが、どこか春の匂いもして――。
　月詠は目を瞑り、爽やかに吹く海風に白銀の髪をなびかせた。

「できるぞ私は」

＜了＞

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あとがき

担当マスター：笈地行
ファンレターはマスターページから！

ご参加ありがとうございます。笈地です。
共通テストと進路関係のシナリオをお届けしました。

進学先は木天蓼大学が人気で、とくに芸術学部を志望している方が多かったです。

ガイドにありましたように、この共通テストのあと、各学校の二次試験があります。

（らっかみ！タイム）２月になりましたら合格発表のシナリオがあるようなので
そこで合格したよー落ちちゃったよーなどお楽しみいただければと思います。
よかったらまたご参加ください。（担当マスターは私ではないかもしれません）

ところで、ちくわって合格祈願の食べ物だったのですね。今回初めて知りました。
これからなにか受験をする方は、ぜひ、ちくわで縁担ぎしてみてはいかがでしょうか。

それではまた別のシナリオでお会いしましょう。笈地でした。

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