何故こんなところに旅館が？｜リアクション

何故こんなところに旅館が？

　茉奈とカノンが案内されたのは『ゆらゆらの間』だった。
「それではごゆっくりお過ごし下さい」
　従業員のスーツ男性が退出したので、改めて室内を見回す。熟睡用ハンモックがある寝室はそれぞれ別にあり、ここは共有スペースなのだが。
「凄いね、ほとんどハンモックだ」
　部屋はどう見てもビーチ、ヤシの木が何本か立っていて、様々な形、色のハンモックがゆらゆらと揺れていた。
「なんかリゾートって感じだけど。でも、海の匂いするかも」
　茉奈はそう呟いた。
「なんか旅館っぽくないね、この風景。綺麗だけど」
「ねえ、これってどうやって乗るんだっけ？」
　茉奈が近くのレインボーなハンモックに手を置く。
「わっ」
　体重をかけると、強く揺れた。
「こ、これ、乗るの難しくない？」
　予想以上のアンバランス感である。
「紐で支えてるからバランスを崩しやすいんだろうね。押さえてるから、茉奈も乗ってみなよ」
「え？　うーん」
　カノンに笑顔を向けられ、再度トライ。
「は、離さないでね！！」
「はは、大丈夫だよ」
　腕をぷるぷるさせながら、どうにか体を預ける。
「あ……なんか気持ちいかも」
　水に浮いているかのような浮遊感。ゆらゆらの間の意味がすごく良くわかる。
「ちなみにだけど、寝られそう？」
「うーん。一晩は怪しいわね」
　寝室のハンモックは揺れ控えめと書いてあったのを思い出した。
（こういうことなのね）
　と、体を起こそうとした時、
「きゃっ」
　案の定、バランスを崩してしまった。
「茉奈！」
　落ちそうになったところを、カノンが支えてくれ、どうにか怪我は免れた。
「だ、大丈夫？」
　心配そうなカノンの顔が近い。肩を抱かれているせいか、密着度合いが凄い。
「あーうん。ありがと。そうだ、温泉行かない？　水着混浴もあるんでしょ？」
「そうだね」
　照れ隠しで離れてしまったが、彼の腕に収まった時の安心感が凄かった。ハンモック効果だろうか。

　大浴場フロアで選択したのは、大浴場「川」だった。
　脱衣場を出て、カノンと合流したのだが、
「えっ」
　目の前には確かに川があるのだが、流れがかなり早かった。
「え、嘘よね？　なんかこう、流しそうめんにならない？」
　なんとも表現しづらいが、それくらい流れが急なのだ。
「ん、でも湯は丁度いいよ。この流れが気持ちいいかもね。茉奈」
　手を差し出される。
「！」
「大丈夫、手は離さないから」
　そう言われてしまうと、握らないわけにはいかない。それはそれとして、
「きゃあっ」
「わっ！」
入った瞬間に二人そろって流されて、気づいたら大浴場「海」の浴槽に浸かっていた。
「……茉奈」
「あ、桜……」
　何故か大浴場で釣りをしている桜匠コンビと顔を合わせたのだった。
　夕飯はクイズのお食事処でゆったり取りたいところだ。

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