コーヒーはおいしいよ？　カフェ・フェスタへようこそ！｜リアクション

コーヒーはおいしいよ？　カフェ・フェスタへようこそ！

【４】コーヒーとお菓子

　一方。綾花と珪は、試飲コーナーの傍にある休憩スペースにいた。
　休憩スペースには、丸テーブルと椅子のセットがいくつか並んでいて、他の参加者たちの姿もある。
　２人は先に、お菓子売り場に立ち寄ってクッキーを買い、試飲コーナーでもらったコーヒーと共にそれを口にして、くつろいでいた。
「香りまで美味しいですね」
　微笑んで綾花が言う。
「ああ」
　珪もうなずいて、コーヒーを一口飲んだ。
　そんな彼に、綾花はついつい見惚れてしまう。
「どうかしたかい？」
「な、なんでもないですっ」
　視線に気づいた彼に問われ、綾花は照れながらも慌ててかぶりをふった。だが、その胸には、彼ともう少し一緒にいたいという気持ちが膨れ上がった。
「珪先生、お時間があるようなら、少し勉強を見てもらえませんか？　ここなら、コーヒーの香りでリラックスできて、いいと思うんです」
　気持ちのままに、彼女は言う。
「それはかまわないが……勉強道具はあるのかい？」
「大丈夫です」
　軽く目を見張って問う彼に、綾花はうなずいた。カバンから参考書やノートなどを取り出し、テーブルに広げる。彼と少しでも長くいられるならと考えて、持参していたのだ。
　それを見て珪は、もう一度目を見張ったが、優しく苦笑すると「なら、始めようか」とうなずいた。

　そのころ、七瀬とウォルターは、お菓子売り場にいた。
　文也と別れたあと、七瀬が甘いものがほしいと言うので、ここに来たのだ。
　売り場には、主に洋菓子が並んでいる。その中に、七瀬は羊羹をみつけた。一口大の大きさのものが、個包装されて売られている。
「ここで売っているということは、コーヒーと合うんですねぇ。コーヒーって奥が深いですね」
　それを見やって、七瀬が言った。
「そうだねぇ」
　ウォルターも興味深げにうなずく。
　２人はそれを買い、すぐに食べようと、休憩スペースへとやって来た。
　七瀬はさっそく、羊羹の袋を開けて中身を口に入れた。
「はあ……口の中が生き返ります」
「次はもう少し、苦味の少ないのを飲むといいかなぁ」
　一口噛んで吐息をつく彼に、ウォルターが苦笑して言う。
　七瀬は羊羹を食べてしまうと、口を開いた。
「ところで、ウォルターさんは鴛鴦茶ってご存じですか？　コーヒーと紅茶が混ざったものらしいです」
「聞いたことはあるかなぁ」
「今度、飲んでみません？」
　うなずくウォルターに、七瀬は問う。
「いいけど、売ってるところあるのかなぁ」
　呟くウォルターに、七瀬は思いついて言った。
「文也さんなら、知ってるかもしれません。今度、聞いてみましょう」
「そうだねぇ」
　うなずいてからウォルターは、ふいにポンと手を打つ。
「いっそ、彼に作ってもらったらどうかなぁ」
「え、でもメニューにないものを、大丈夫でしょうか」
　驚いて返す七瀬に、彼はにっこりと笑った。
「大丈夫大丈夫。頼めばきっと作ってくれると思うなぁ」
　言って、自分も羊羹の袋を開けて、中身を口に入れる。
　そんな彼を、七瀬は苦笑と共に見やるのだった。

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