あやかし忘年会、ひゅ～どろろ｜リアクション

あやかし忘年会、ひゅ～どろろ

●喜びとともに過ぎゆく今年

「はあ～忘年会最高！」
　幽体離脱がタイムアウトした想花は、テーブル席に着き、おばけ料理を堪能していた。
　お酒の効果はなくなったけれど、気持ちの高揚はおさまらない。
　あやかしたちは、ひとの想花にも優しくて、次々と料理を運んでくれた。
　とくに、幽霊の女の子が想花になついている。
「ねえこっちのおさかなもおいしいよ。たべるとあーんなにおっきくなっちゃうけど」
　あーんなに、と指さす方には、さっきの狸と狐の化かし合いより少々劣る程度に巨大化したあやかしの姿。
「あんなに大きくはなりたくないなあ」と言いつつも、『鮭の大助焼き』はとても美味しそうだ。
「これはきっといい味だよ。剛鉄が作ったみたいだから」
　少女を抱いた山高帽の男性がそう声をかけてくる。
　想花はどうしたものかと迷ったのちに、えいっとそれを食べたのだった。
「やっぱり美味しいっ……けど、体が大きくっ……！」
　一軒家ほどのサイズになるが、一緒にいたあやかし達は、まったく気にしていないようだ。
「ほうらおいしいでしょ？」と、少女がにこにこ言っている。
「うん、とっても！」
　答える自分の声が、いつもよりも低くって、巨大化の影響？　と想花は笑ってしまった。

　巨大化した想花が元に戻って、おばけ酒『童子切』を飲み、どこかに飛んで行った後。
「今年も終わるねぇ……」
　ステージから聞こえる歌声に耳を傾けながら、道哉は呟いた。
「……猫又になる前は早く春がくるように、雨が止むように願い、一年の巡りが遠かったものだ。世界を恨む日もあった。それに比べれば……」
　今年という一年がもうすぐ終わるこの時期。
　寒く冷たい冬の夜だというにも関わらず、周囲にはあやかしと人の笑顔が満ちている。
「きなこも剛鉄もいる」
「うん、わたしはここにいるよ」
　道哉の声に、きなこは微笑んだ。
　お酒をちびちびと舐めているせいで、ふっくら丸い頬は、すっかりピンクになっている。
　剛鉄のほうは無言かつ無表情だが、その眉がぴくりと動いたことに、道哉は気づいていた。
（この二人がいて、皆がいて――）
「なんと眩しい日々だろう。たまに置いてきた者達も脳裏をよぎるが、私はここで生きていくよ」
　道哉はお猪口を片手にほうっと温かな息を吐く。
　そして一口、お酒を飲んで。
「まあ、こんな賑やかな日々じゃおちおち寝れもしないからね」
　笑う。
　その頭には、いつの間にやらうっすら三毛猫耳が。
　指もだんだん短く丸く、もふもふもふになっているようだ。
「きなこ美味しいかい？　私の分もどうだ」
　ついにお猪口を口に運べなくなり、道哉はそう問いかけた。
　まっすぐに伸びていた背は丸くなり、いやそれどころか、体のサイズもずいぶん縮んでいる。

　あやかしも、ひとも。
　楽しい夜は、まだまだ終わりそうにない。

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あとがき

担当マスター：瀬田一稀
ファンレターはマスターページから！

このたびは、あやかしの忘年会にご参加くださり、ありがとうございました。
１年の嫌なことを忘れるものが忘年会とされていますが、パートナーとのやりとりや忘年会の過ごし方を見ていると、みなさん楽しい１年だったようで何よりです。
来年も、素敵な年になりますように。

久しぶりにリアクションを書かせていただき、とても楽しかったです。
みなさんのおかげです。
感謝いたします。

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