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雪待ち、恋傘横丁
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誘い文句の中に、自前の和服がある、とは口に出さなかった。カジュアルな安物ではない。正絹、西陣織り。濃紺色の蔓柄。オーダーメイドだから数万円程度ではきかない逸品だ。
八神 修
はタンスの中にそれを見い出し、そっと再びしまいこんだ。
世間一般の普遍的な金銭感覚と己を比べた時、どこか隔たりを感ずるようになったのは、彼女がわずかながらに眉をひそめるのを幾度も見たからだ。
七夜 あおい
のかすかな表情の曇りを修らしく考察し、やがて気がついた。兄弟の多い彼女の実家は決して裕福でなく、幼い頃から積み重ねた苦労がしたたかな倹約家に育てたらしい。派手な散財にはどうやら忌避感があるようだ。
うなるほどの金があるとて、悪いことではあるまい。星ヶ丘寮の誇る利便性は修に時間と心の余裕を生んでくれたし、おかげで日々費やすリソースの多くを勉学に振り分けられた。友人たちと余暇を楽しみ、あおいと過ごす時の猶予を捻出することもできた。家柄の裕福がもたらしてくれたものが修の真っすぐで健やかな人格を育て、将来を見据え、決意し、歩み出す強さを与えてくれた。時に他者へ物質的に、精神的にそれらを分け与える優しさをも育んでくれた。
幸運であったと思う。
それでも、彼女と同じ目線に立ちたかった。彼女の手を力強く引いてゆくのではなく、隣に並び立ち共に歩んでゆきたかった。
修の胸には葛藤が巡る。見据える未来があり、夢をつかみ取るのに十分な要素を修は備えているが、時にあおいの目を曇らせることがままあった。それを晴らすため全て捨ててもいい、と軽々しくは言えまい。彼女もそんなやけっぱちのような決断を修に望みはしないだろう。
己の未来も、彼女の未来も、捨てたくはない。タンスに折り目正しく収まった絹の手触りを堪能しつつも、修はしばし思考のさざ波に翻弄された。
旧市街は人いきれ。賑わっていた。雪待ち、恋傘横丁などと気取ったネーミングだが、心躍らせた者も多かったようだ。
あおいと共に、格安レンタルの着物に身を包む。あおいは橙の格子柄に朝顔と桜模様、修は千歳緑の七宝柄を選んだ。着心地はさすがに自前の上物に及ばないが、いざ着てみればこれが案外、肌触りも悪くない。
修は一人で着こなし、あおいは親切で好ましい妙齢の女性に着付けを手伝ってもらった。
「おおー、修君似合う! 和服も違和感ゼロだね」
「あおいこそ、すごく可愛いよ。何を着ても似合うな」
「またまた、もう。お世辞が上手いんだから」
指で軽く修の胸を小突きつつ、あおいの顔は緩んでいた。修の言葉は無論、本心であったが。
人間国宝のなんとかいう職人が営む『猫髭屋』の和傘を借り受け、さしてみる。竹と和紙で作られる和傘は華奢なようでいてその実、一般的な洋傘などよりよほどがっしりとしている。特に修の選んだ番傘は鮮やかな海老茶が目につくも、シンプルな造形でうるさすぎず、竹の柄は太目で適度な重量に安心感があった。他方、あおいの蛇の目傘はいくらか細めで、纏う花柄に漆黒へ浮かぶ月のような丸模様が映える。木棒に巻かれた藤に手を添え、控え目に微笑むほんのりと上気した頬に色気を覚え、修は知らず喉を鳴らした。
恋傘横丁となった旧市街、参道商店街を行く。草履をはいての歩き心地が新鮮だ。
しっかりと着付けてもらったのが崩れぬうちにとのあおいの希望で、まずは写真を撮影してもらうことにする。カメラのニシムラで記念写真が無料、セピア風の加工とフォトフレームを追加しても非常に割安だ。
「ポーズはどうする? 時代劇みたいに、カッコつけちゃう?」
「いや、普通でいいんじゃないか……? 後で見たら恥ずかしくなりそうだし」
「あはは、そうだよね」
カメラマンがしきりに寄って、そばに寄ってというものでぴたりと寄り添い、気恥ずかしくも胸を高鳴らせながらにレンズを覗いた。どうも恋人と思われていたらしい。それはそうだ、男女が旧市街のイベントに乗っかって着物姿、和傘だって手にしているのだから。シャッターが切られる瞬間、隣の彼女は何を想っただろう。
写真は通常のカラーとセピア風、両方をもらうことにした。
「うん、いいね♪ いい記念になったよ」
「ああ……そうだな」
春が来て互いに生活の場を異にしても、修は幾度となくこの写真を見るだろう。あおいにもそうあって欲しいと願わずにいられない。
冬の銘菓に抹茶で休憩をしてから、話弾ませて商店街を歩く。雪はまだ降らないが、広げた和傘へうっすらと白のヴェールがかかればどれほどに美しいだろう。なるほど、雪待ち。恋傘横丁とは良く名付けたものだ。
「わ、見て修君! あの子、大きい!」
「あの子?」
あおいが鼻息荒く指差したのは、手芸店『WATA-AME』の店頭にディスプレイされたイベント限定品、100cmを越える巨大ぬいぐるみだった。ゆきねこちゃん、というらしい。あおいはすぐにも駆け寄り、やわらかなボア生地に顔を埋める。
「ふわ~、ふかふか! 気持ちいい……!」
「本当に大きいな。価格もお値打ちみたいだけど、買う?」
「う~ん」
尋ねたが、買わないだろうとは分かっていた。彼女は春に、九州へ移り住む。福祉系専門学校へ進むのだ。間もなくやってくるだろう引っ越しの時、この巨大なゆきねこちゃんは実にかさばるし部屋を圧迫するだろう。
などと理屈を並べ立てることなく、修はスマートフォンのカメラを、名残惜しそうなあおいとぬいぐるみへと合わせた。
「写真の一枚くらい撮っておこう。あとでメールで送るよ」
「うん、ありがとう!」
質素倹約を心掛けるあおいが、この手の趣味嗜好品に目をやることはあまりない。それでも、よほどに気に入ったのだろうか。
「いつか、お迎えできたらいいなぁ……」
ふと、気づく。何も修に限ったことではないのだ。あおいにもいずれ、夢と現実を天秤にかけ選択する時が訪れるだろう。
彼女はいつか、ゆきねこちゃんを部屋へと招き入れるだろうか。それとも、涙を呑んで諦めるだろうか。
いずれにせよ、と修はその横顔を眺める。
(応援してる。どんな決断を下そうとも、君を)
視線に気づき怪訝そうにこちらを向いた微笑みを、愛おしく眺め続けた。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
網 透介
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
恋愛
NPC交流
定員
10人
参加キャラクター数
7人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2023年08月12日
参加申し込みの期限
2023年08月19日 11時00分
アクション投稿の期限
2023年08月19日 11時00分
参加キャラクター一覧
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