【ネコミケ冬】ドキドキゾクゾク！つながれネコミケ♪｜リアクション

【ネコミケ冬】ドキドキゾクゾク！つながれネコミケ♪

　そのコスプレスペースでは。
（冬のネコミケ。来年の春に東京へ引っ越したら多分しばらく来れない……）
　魔法少女ミスティックアリアのコスプレをした落合まゆらがしみじみと思っていました。
　準大手声優事務所のオーディションに合格したまゆらは、春から上京することになったのです。

　前回夏のネコミケで、まゆらはコスプレバトルで優勝していました。
　けものコスプレ姿で電車の吊り広告に出演し、初めて見た時はドキドキしてどんな顔をしていいかわからなかったものです。

「世界に大いなる神秘の輝きを！　魔法少女ミスティックアリア！」
　午前中は、長年にわたり演じてきたミスティックアリアのコスプレ。
　自分が声優を目指す原点なのだから、そりゃあ気合が入りますし。
　必殺技も決めゼリフも堂に入ったものです。
　集まった人の求めに応じてパフォーマンスをしたり、名刺代わりに作っておいたイラストカードを配ったり。
　イラストの仕上がりはハイクオリティで、綺麗系も可愛い系の絵も描きわけるカードに皆は驚き喜ぶのでした。
「えっ、これ腐滅の刃の悲惨様？」
「はい、午後からは『腐滅の刃』の悲惨様のコスプレに挑戦します」
　観客からどよめきが上がりました。
　アリアと悲惨様では光と闇、イメージは真逆です。
「午後も見に来ます！」
「楽しみです！」
　皆が口々に期待の声を上げるのでした。

　急いで食事を済ませ、和服に着替えてメイクをばっちり決めた午後。
（うん、これなら苦しくなく声を出せるわ）
　お腹に力を入れて帯を調節し、ヒールつきの草履で背を高くして悲惨様の妖艶な和装姿を再現したまゆら。
　声優（新人駆け出し初級声優見習い未満候補心得だけれど）としては「妖艶な美女の姿でねっとりしたイケボを出す」に挑戦してみたいところです。
　堂々と頭を上げ現れたまゆらに、場がざわめきました。
「悲惨様だ！」
　その場に見えない鬼たちがいるかのように見下すまゆら。
「私の言うことを否定するのか？　私が〝正しい〟と言った事が〝正しい〟のだ」
　地獄から響くかのような妖艶な低音イケボに、場は一瞬静まり返り。
「悲惨様！」
「悲惨様、素敵！」
　午前以上の声援がまゆらに飛んだのでした。
（やっぱりコスプレって、声優って楽しい……）
　様々な役を演じ分ける楽しさを、まゆらは全身で味わっていました。

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