一陽来福。冬至の日には、カボチャを食べて｜リアクション

一陽来福。冬至の日には、カボチャを食べて

　カボチャのカレーは、七瀬の想像と違わず、ほくほくで美味しいものだった。
「ウォルターさん、どうです？」
　ウォルターが、ぱく、とカボチャの塊を口に運ぶのを見守って、七瀬は訊ねてみる。
　ウォルターはしばらく答えず、口の中に広がった味を分析していたようだったが、
「なるほどこう来るか……。甘さとスパイスの複雑さが絡み合って、意外にも美味しいねぇ。これはカボチャの種類によっても味わいが変わりそうだよぉ」
　と、かなりご満足な様子である。
　カレーを完食したあとは、いよいよカボチャのパンチである。スイカのパンチは繰り抜いたスイカに切ったフルーツやシロップ・ソーダなどを入れた飲み物だが、それのカボチャ版だ。
「カボチャのパンチは初めてです。見た目もすごいですね。名前に違わずパンチがあるというか」
　ごくり、と生唾を飲み込む七瀬。美味しそう、と、なんだろう、の両方のゴクリだ。
「……では、いざ実食！　です」
　七瀬は、星型に切り抜かれたオレンジ色のカボチャを、ソーダと一緒にスプーンで掬って口に入れた。
「ふむふむ……これはっ！！」
「く、倉前？　どうしたのさぁ、雷に打たれたみたいな顔して」
「フルーツに負けず劣らずのカボチャの甘さ、食べるまでは正直どうなんだろうと思っていましたが、面白い味です！」
　七瀬は早口で一息に感想を吐き出すと、
「ウォルターさんも食べてみてください！」
　と、カボチャやフルーツを乗せたスプーンを、ウォルターの口に押し付けた。
「どうぞ、どうぞ」
　いわゆるあーん、であるが、カボチャのパンチの衝撃に打たれた七瀬はそんなことは気にしていない。
　ウォルターもウォルターで好奇心に負けて、パクリ、スプーンを咥える。
「こ、これは！」
「ね、どうですか、どうですか？」
　ここからウォルターと七瀬は早口でカボチャのパンチについて熱く語り合うのだが、ふたりでしか通じ合わないような内容かつスピード感だったので割愛したい。

　数十分後。
　大満足で『novitas』を後にした七瀬とウォルターは、カボチャまみれの参道商店街を歩いていた。
「カボチャ尽くしで美味しかったですねぇ。あ、僕あと行きたいところがもう一つあるっちゃけど、付き合ってくれますか？」
　七瀬が足を延ばしたのは、雑貨店『memoria』である。
「カボチャ猫フィギュアが気になっとったんですよ。ウォルターさんも一緒にどうですか？」
「いいねぇ。ふーん、ランダムでどれが出るか運試しってわけかぁ」
「はい。どれがでるがわからんらしいので、僕はウォルターさんのを選びます。ウォルターさんは僕のを選んで欲しいです！」
「任せてよねぇ」
　互いに互いの箱を選んで購入。店を出てから開けてみる。
「さてさて、何が出るかな～。僕は……あ、『カボチャをかぶった猫』です。ウォルターさんは？」
「えーとねぇ……『カボチャケーキを食べる猫』かな？」
　それを見て、七瀬は『novitas』での出来事をあれこれと思いだし、それから女流歌人の有名な短歌を思い浮かべて、くすっと笑った。
「『こ、これは！』と　あなたが言ったから　今日は僕らの　カボチャ記念日」
　……なーんてね。

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