【クリスマス☆green】クリスマスキャロルを聴きながら｜リアクション

【クリスマス☆green】クリスマスキャロルを聴きながら

サンタさんとクリぼっちな生き霊たち・その４

「サンタさん、プレゼント配りの途中でしたよね？」
　慶介は、へたり込んでいたサンタに手を差し伸べる。
「よかったらお手伝いできないかなって……大丈夫ですか？」
　サンタは慶介の手を取って立ち上がった。トナカイたちも無事なようだ。
「助けてくれてありがとう、若人諸君。しかし仕事は大遅刻だ。子ども達もプレゼントを待っていることだろう。配るのを手伝ってくれるならありがたい」
「手伝いますよ！　な、晴月」
　ラッセルは晴月にウィンクする。もちろん、と晴月も頷く。
「それじゃあ私は、仕事終わりのりふれっしゅを用意しよう」
　道哉はにこにことサンタに言った。
「みんな、仕事が終わったらここに戻ってきておくれ。いいものを用意しておくからね」

　こうして、慶介とラッセルと晴月は、プレゼントをいっぱい入れた袋を持ってサンタさんのお手伝い。
「頑張ろうぜ、晴月サンタ」
「よろしくね、ラッセルトナカイ君」
　空を飛べる晴月はクリスマス会用に買った仮装でサンタに。ラッセルはろっこんでシロフクロウになり、トナカイのコスプレグッズを身に着けて、冬の夜空へ飛び出していく。
　慶介はというと……。
「う、わあああぁぁ……」
　赤いサンタの帽子を被って、シャンシャンと鈴を鳴らしてソリの助手席に乗って、空を飛んでいる。
「俺、サンタになっちゃった……！」
　大感激である。
「頑張ってプレゼントを配らなくちゃ」
「そうじゃな、ホーッホホーウ」
　サンタは白いひげを揺らして笑った。

◇

　それから数時間が経ち。
　手分けしてプレゼントを配ったおかげで、サンタの仕事はクリぼっち生き霊事件があったにも関わらず、いつもより早く終わった。屋上に戻ってくると、道哉と、きなこと、武人風の無口なお爺さんが待ち構えていた。
「ええと……そちらの方は？」
　恐る恐る慶介が聞くと、お爺さんは両手の包丁を華麗に振り回し、
「剛鉄」
　とだけ答える。道哉が補足する。
「剛鉄さんは包丁の付喪神でね。自身を使い和洋折衷作れる料理上手なあやかしなんだ」
　その言葉通り、剛鉄の前には、輝かんばかりの刺身やつまみが並んでいた。
「仕事終わりには明日への活力を養うためにりふれっしゅが必要だろう。さんたさんとやら、一杯やろう。若者にはお茶やじゅーすもあるからね」
　それを聞き、ラッセルと晴月は目を輝かせる。
「美味しそう！」
「すげー。桜花寮に帰ろうかと思ってたけど、ちょっとだけ食べてくか」
「うん！」
　道哉は慶介も場に誘った。
「ほら、少年も。温かいものでも食べなさい」
「はい……ありがとうございます」
　剛鉄の料理を宛にした、深夜のサンタとの酒盛りは穏やかに盛り上がった。

「熱燗は骨身に染みるねぇ……いい酒だ」

　腹もくちて、人心地ついた道哉は、きなこにプレゼントを差し出した。
　ここに来る前、コンビニで買ったものである。
「冬の装いがあるからね。きなこに付けてほしいと思ったんだ」
「かわいいボンボンがついたてぶくろ！　ありがとう」
「きなこは幽霊だから普段は寒くないんだろうけど、実体化することがあったら使っておくれ」

　そして、ラッセルも。
「そうそう。晴月へ、クリスマスプレゼント」
「？」
「クリスマスって贈り物しあったりするって、さっき教えたじゃんか」
「私に？」
　ラッセルはニカッと笑って頷く。
　ラッセルから晴月へのプレゼントは、黄色いリボンで包んだノートとペンだった。
「自由に使っていいぞ。何かあるなら交換日記風に俺が答えてもいいし」
「ありがとう！」
　晴月はプレゼントを胸に抱えてにっこりと笑った。
（喜んでもらえて良かった）
　ラッセルは胸をなでおろした。

　熱燗をちびちび舐めながら道哉やラッセルのやり取りを見ていたサンタさんは、真っ白なおひげの顔に満面の笑みを浮かべていた。
「ホウ、ホホーウ。クリスマスはやっぱりこうじゃなくちゃな」

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