【期末テスト】赤点？満点？？氷結、四日間の死線＜物語編＞｜リアクション

【期末テスト】赤点？満点？？氷結、四日間の死線＜物語編＞

〇３日目：数学、音楽

「とうとう壊れちゃったんですね……」
　こんなこともあろうかと時子は対策を考えていた。
　コートを着て手袋してテストを受ける。
（なんとかテストも集中してできそうですが……）
　相変わらず白衣姿で寒そうな尚輝先生が心配になった。
　周囲は皆震えながらもテストに集中しようとしているようで、目を上げるものはいない。
　尚輝先生が近づいてきたとき、時子はアイコンタクトで合図を送った。
　そして膝の上に置いたマフラーをそっと渡す。
　驚いた様子の尚輝先生だが、黙ってそれを受け取った。
（風邪ひかないでくださいね）
　時子が声を出さずに言ったその言葉に、先生は頷いてマフラーを首に巻いた。

　１年の梓智依子は、数学のテスト開始ギリギリまで、彼女を慕う年下の同級生たちと教科書やルーズリーフなどを広げて対策していた、が。
（……今日はやたらに寒いわ。この前からエアコンの調子が悪かったみたいだけど、まさか故障するなんて……）
　とりあえずコートだけでも着て寒さをしのごうとするが。
（さすがに手袋をつけてシャープペンシルは使いにくいわ）
　仕方なく手袋をはずし、手がかじかむのをこらえながらなんとかテスト問題に集中する。
　窓際の席のせいか、余計に寒さを感じる。
（あ、雪……）
　ふと目をやった窓に雪が舞っているのが見えた。
（気を取られてる場合じゃないわね。集中しなきゃ）
　しかし次の瞬間、窓が開いた。
　そちらを見た生徒たちは、目を疑うこととなった。
　窓から入ってきたのは、動く雪だるまだった。
「アソボウ」
　雪だるまは智依子を誘ってきたが、完全に集中モードに入っていたので無視されることとなった。
　仕方なく雪だるまはほかの生徒たちに声をかける。
　どうやら先生には雪だるまの姿が見えないようだ。
（よし、全問を解いたし見直しも終わったわ……えっ？）
　そこで智依子は雪だるまに気づいた。
「アソボウ～」
　雪だるまに誘われ、どうしたものかと悩む智依子。
（家では楓に遊んでってねだられてるけど、まさか学校でまでこんなことになるなんて）
　結局、自分が娘の楓と接するように、雪だるまに優しく囁いた。
「みんな、大事なテストを受けているところだから、テストが終わってから遊んであげる」
「ワカッタ」
　どうにか納得してくれたようだ。

　その後、音楽のテストも無事終わり、その日のテストは終了した。
　智依子は雪だるまとの約束通り遊ぶことにする。
「そうね、雪合戦でも……」
「ママー！」
　そこへ娘の楓が祖父母と一緒に来た。
　用事のついでに迎えに来たらしい。
「うわあ、雪だるま！」
　目を輝かせた楓は、喜んで雪だるまと遊びだした。
　智依子も目を細めながら、それに加わるのだった。
「もう少ししたら帰りましょうね。ママのテストは明日まであるの」
「えー！　あしたもあそびにきていい？」
「それはちょっと……」
　明日も雪だるまが出てくるのは勘弁してほしい。
　
　