【期末テスト】赤点？満点？？氷結、四日間の死線＜物語編＞｜リアクション

【期末テスト】赤点？満点？？氷結、四日間の死線＜物語編＞

〇２日目：理科、体育

「クシュン……桐島先生、鼻風邪がひどいのでティッシュ束と小型ゴミ箱の持ち込みを許可してください」
　３年４組のエレノアは、鼻をかみながら担任の桐島義弘先生にそう申し出た。
「鼻風邪……大変だな。ああ、一応ゴミ箱とティッシュ束を改めさせてもらっていいか」
　桐島の眼鏡が光る。だがそんなことで動じるエレノアではない。
「……先生、私を疑っているのですか」
「あ、いや、そういうわけでは……」
　エレノアは丸めた濡れたティッシュを桐島先生に突きつける。
「この接着剤みたいに濁った鼻水が見えますかね？　これが仮病で出せますか？」
「いや、悪かった、お大事にな」
「私がカンニングに頼らないといけない成績かは先生ご存知ですよね？」
「ああ、そうだな」
　だが桐島先生は知る由もない。そのティッシュは、予めエレノアがろっこん『オールド・ジョーク』で粘液化した水で濡らしたものであることを。
　そしてエレノアと葵、タルトの狙いは今日ではない。
　これは来るべき明日に備えての準備なのだ。

（……なぜこんなに寒いの？）
　１年の篠原翠響は教室で震えていた。
（エアコンがつぶれちゃった？　ていうか、教室に何かの気配を感じるんだけど）
　見えてはいないものの、教室には受験生の幽霊があふれていた。
（何かいるような……気配がする。それが冷気を発しているような……って、私って寒さのせいでどうかした？）
　混乱しながらも、翠響はテストに集中しようと努める。
（とにかく今は目の前の問題を解くことに集中……）
　日ごろから要領がよく挫折知らずの翠響、本来ならこの程度の問題は楽勝のはずだ。
　しかし寒さは容赦なく厳しくなり、どうしても集中力が削がれてしまう。
（集中……集中！）
　翠響は意地で何とか答案用紙の解答欄に答えを書き込んでいった。
　どうにか書き終え、翠響は思う。
（もう寒くて寒くて自販機で熱い飲み物が飲みたい……）

　キーンコーンカーンコーン♪
「そこまで」
　今日一日のテストが終わるチャイムが鳴った──速攻で立ち上がり、自販機へ走る。
　同じことを考えた者は多かったようだが、翠響は自販機に長蛇の列ができる前にたどり着き、無事ホットココアを手に入れた。
　満足そうに手を温め、口につける。
（まあ、あんまり甘いものを取りすぎるわけにはいかないけど。新体操をやっている身としては体形維持に気を遣うので……）
　日ごろからカロリーに気を遣っている分、暖かいココアは喉と冷えた体に染み渡るようで、翠響は幸せな気分に包まれた。
「今日はめちゃくちゃだったけど、さすがに明日は大丈夫でしょう……」

　そう信じた自分の甘さを、エアコンが完全に故障したと知った翌日に翠響はブチ切れそうに呪う羽目になったのだが。