【期末テスト】赤点？満点？？氷結、四日間の死線＜物語編＞｜リアクション

【期末テスト】赤点？満点？？氷結、四日間の死線＜物語編＞

　今の月原想花の状態は「鬱々として楽しまず」とか「怏怏として楽しまず」という表現がぴったりだった。
「夏の期末と言い今回の期末と言い、この学校、冷暖房ケチってない？」
　夏はクーラーが故障して室内温度が乱高下し、冬は日を追うごとに温度が低下してひどい目に遭った。
　それは皆同じ条件だが、想花の悩みはそれだけではなかった。

　先日、ぼさぼさだった髪を切りにいった時うっかり「おまかせ」にした結果……
　想花は髪に手をやってため息をつく。
　ベリーショートになってしまった。
（デコは完全に見えてるし、全然似合わないことこの上ないし、おまけに冬だから寒い……）
　と、本人はもうなんか精神的には完全に「この世の終わり」そのものだ、と嘆いている。
　だが、周囲の見解はそうでもない。
　元々綺麗めな顔立ちに加え、フェイスラインが美しいのでそれが強調された形なのだ。
「あの子、月原さん？　すごく綺麗なんだけど……」
　と囁かれているのに、
（みんなみっともないって噂してる……そうだよね）
　などと、それすらネガティブにとらえてしまっているのだ。

　そんな中、刻一刻と迫るテスト返却──
（絶対に追試とか補習は嫌だ！）
　でも自信はない。そんなものはいつだってない。
　先生に呼ばれ、のろのろ立ち上がりテストをもらう。
　ざっと確認した。
（よかった、今回は追試を免れた……）
　不幸中の幸いだ、とボーっとしていたら。

「想花さん」
　声をかけられ、視界に入ったブロンドの縦ロール──クラスメイトの川上紗櫻都（かわかみ・しゃるろっと）に、複雑な表情になった。
　この髪を切ったのが、星ヶ丘のセレブ御用達ヘアサロンの彼女の母親だった。
（なんで鏡を見た時にちょっときれいなような気がしちゃったんだろう……素材がぼくじゃやっぱり変だよ……）　
　そんなことを思い出しながら、ここ最近、彼女と話をすることが多いな、と思う。
　紗櫻都は言った。
「今度ヘアスタイル写真のモデルになってくれないかな」
「えっ？　いや、ぼくなんかがモデルだなんて……」
　慌てて固辞した想花だが。
「ヒマな時でいいんだ。お母さんが気に入っていて、ぜひって」
「……ぼくなんかでいいのかな」　
　セレブ御用達のヘアサロンで無料で切ってもらって、申し出を断るわけにもいかない……
　結局想花は、
「それじゃ……今度ね」
　とあいまいに返事したのだった。