【期末テスト】赤点？満点？？氷結、四日間の死線＜物語編＞｜リアクション

【期末テスト】赤点？満点？？氷結、四日間の死線＜物語編＞

〇テスト返却

（心臓飛び出る……いっつもこの瞬間が怖さとワクワクで堪らないんだよなぁ）
　桜井ラッセルにとって、木天蓼大学の美術学科に行きたいと決意して勉強した成果が出る時だった。
（今回は特に頑張ったから……！）
　ラッセルの苦手教科は英語だ。
　いつもは授業も億劫だし、テストなんて選択問題を勘で辛うじてで３０点いけばよくやったレベルだった。
　皮肉にもハーフで金髪の外見から、英語は当然できるものと期待されがちだが、ラッセルは日本育ちだ。
　家でも日本語で通していたので、幼少の事もあり身につかなかった。
（寝子島にくる前にでももっと家族で英語の会話してればよかったな……でも勉強嫌いだから向き合おうとしなかったかなー……）
　いまさら悔いても始まらない。
　リスニングをふくむ英語の克服がマタ大の入試には必要なのだ。
　自主登校日のたびにウォルター先生に頼んでリスニングの模擬練習をしてきた。
　もちろん家でも、繰り返し書いて、声に出して勉強したのだ。
「桜井ラッセル」
　名前を呼ばれ、ラッセルは立ち上がる。　
（答案用紙はほぼ埋めることができたんだ。へっぽこ英語でも埋めれただけでも進歩だって……当ってることを祈ろう）
　ウォルター先生は微笑しながら答案を渡してくれた。
　表情の意味はわからない。
　それより結果を見た方が早いだろう。
　ばっと、答案を見る。
「……！」
　にやけが止まらない。
（そっか～……俺もやればできるんだ）
　ウォルター先生のほうを見ると、目が合った。
　頷く先生に、ラッセルはサムズアップして見せる。

「どうした？　成績よかったん？」
　わかりやすくにやけていたからか隣の席の友人に声をかけられた。
「やー、まー……内緒」
「なんだよー」
（人に点数教えたり、自慢はしねーけど）
　テスト返却後のやり取りはデリケートだ。
　成績が悪かった人を気遣わなくてはならない。
　ラッセルは、なるべく喜びを顔に出すまいとした。
（うっかり忘れるとか凡ミスしねーようにこれからも勉強してくぞ。受験までは特に！）
　それでも、誰かに話したくなっている。
（とりあえず後でウォルター先生にお礼言うか）
　英語を集中特化していたが、これからは他の教科も底上げしないとならない。