【期末テスト】赤点？満点？？氷結、四日間の死線＜物語編＞｜リアクション

【期末テスト】赤点？満点？？氷結、四日間の死線＜物語編＞

「ウォルター先生、試験問題の作成や監督お疲れ様！」
　２年の稲積柚春は、ブラックウッド邸でウォルターとお茶会を楽しんでいた。
「先生としてのお仕事は、これから採点して通知表も作って色々残ってるってわかってるけど、今日はワットの時間として息抜きしてね」
「……確かに今回は、息抜きが必要かもねぇ」
　そう言うウォルターがなんだかいつもより疲れて見えて、柚春は少し心配になる。
「中間テストの時はメアリさんが来てくれたりしてびっくりしたけど、今回のテストも色々あったね。エアコンが壊れちゃうなんて思わなかったから、試験に集中できるかドキドキしちゃったよ」
「ああ、故障は仕方ないけどいろいろ妙なことが起きてたからねぇ」

「妙な事……そうだ、ドキドキと言えば最終日……ワットはどうだった？」
「最終日？」
　ウォルターは何のことかわからないといった顔をしている。　
「教室を取り締まるので、それどころじゃなかったかな？　その……ドキドキというか、そわそわしなかったかなぁと思って」
「あの日はエアコンも直って、少し暑すぎたのか赤い顔をしてる生徒が多かったかな。けど静かだったし全然問題ないよぉ」
「そう？　何事もなかったなら一安心。でも……何か隠してない？」
（最終日、なんだかドキドキしてワットの顔が浮かんで大変だったんだよね……ワットはなんでもなかったのかな？）
　柚春は平静を装うウォルターの態度にやきもきしていた。
「隠す……なんのことかなぁ。大変だったのは最終日じゃないんだが」
「何かあったの？　変なことがあったなら教えてよ、僕も同じ事をやってみたいかも」
「とんでもない！　もうあんなのは懲り懲りだよぉ」
　真顔になるウォルターに柚春は驚く。
「……えっ、何？　まさか女生徒に迫られたりしたの？」
「違うよ、何言ってるんだ」
「女生徒じゃなくてまさか男子生徒とか？　変な事がなかったのなら、僕がやっても構わないよね？」
「意味が分からないよぉ……」

　３日目のポルターガイスト現象のことを説明されて、やっと柚春は納得した。
「稲積はなんのことを言ってたのかなぁ？　もしかして試験中にエッチなことを考えてたりなんかしないよねぇ？」
　逆襲に転じようとするウォルターに、柚春はしっかり目線を合わせる。
「ワットが僕と同じ好きって言ってくれたからって、浮かれずテストも頑張ったよ。手応えもあったし、残念な点はとってない……はず」
「後で確認させてもらうからねぇ」
「だからね、お仕事が落ち着いたらまたデートしようよ。冬休みもあるしクリスマスももうすぐだし、それに……ワットにもっともっと僕を好きになってもらわなくちゃいけないから！」
「……冬休み、教師は結構忙しかったりするんだけどねぇ」
　毒気を抜かれた様子でウォルターは零すが。　
「好きだから付き合えないだなんて、もう言わせないから覚悟してね」
　柚春は攻めの姿勢を崩す気はないのだった。