【期末テスト】赤点？満点？？氷結、四日間の死線＜物語編＞｜リアクション

【期末テスト】赤点？満点？？氷結、四日間の死線＜物語編＞

〇テストが終わって

「ふう、何だか今日は気付いたら服が脱げてたり、体が火照ったり不思議でしたけど……テストも全部終わりましたし、学食でお腹いっぱい食べてから帰りましょう♪」
　マイペースでのんびり頑張った巫部紫苑は、上機嫌で食堂へ向かった。
　掲示された日替わり定食のメニューを眺める。
「とりあえず、日替わり定食を全種類と温かい麺類を全部……それからデザートも忘れずにお願いします」
　毎度の全注文に、おばちゃんたちは手慣れた様子で答えるのだった。
「いただきます。……ああ、ご飯が美味しいです♪」
　満足そうにすごいスピードで定食を頬張る。
「毎回テスト中に何か起きるせいかいつもお腹空くんですよねぇ……丼物も追加で頼んじゃいましょう」
　テストが無くても大体お腹は空いているのだが。
　人心地ついた紫苑は、これからのことに思いを巡らせる。
「今日で期末テストも終わりましたし……今年はあと終業式くらいでしょうか？　ああ、その前にクリスマスが来るんでした」
　クリスマスのことを考えると、自然とごちそうが頭に浮かんでくる。
（……チキンにケーキに……美味しいものがいっぱいで良いですよね♪）
「……何だかクリスマスの事考えたらまたお腹空いちゃいましたね……」
　テーブルの上のメニューに目をやると、パーティ料理っぽい揚げ物が並んでいる。
「これも一通り追加しちゃいましょう」

「ご馳走様でした♪　今日も美味しかったですね」
　手を合わせて、紫苑は立ち上がり食器を片付ける。
「さて、それじゃ……帰りながらお夕飯の材料も買って行きましょう。今日のお夕飯はどうしましょうか……お魚、お肉、う～ん、食材見ながら考えましょうか？」
　心も足取りも軽く、いきつけのスーパーへ向かう紫苑。
「食材見ながら料理考えるのも楽しいんですよねぇ♪」

「終了です。答案用紙を後ろから回してください」
　全てのテストが終わった。
　教室内には、安堵とも嘆きとため息ともつかない声が上がる。
　椎井莉鳥はさっさと通学カバンに筆入れなどをしまい込み、そっと立ち上がった。
　立ち上がるついでに伸びをする。
（これであとは冬休みだけど、来年大学受験だし冬休みなどないも同然ね）
　第一志望は木天蓼大学薬学部だ。
（来年の今頃、無事受かっていたら大学生ね）
　理系だから、あまり遊んでいられないかもしれないが、その方がいいかもしれない。

　そんなことを思いながら、下足箱で靴を履き替えていたら。
「先輩」
　と声をかけられた。
「中倉さん」
　振り返った莉鳥は陸上部の後輩を見つけた。
　中倉琉歌。短距離走が得意な1年生だ。
「テストはどうでしたか？」
「期末テストで躓くようじゃ、来年の受験の結果なんて見えてるわ」
　とそっけなく返事する。
「すると手応えはよかったんですね」
「あなたはどうなの、中倉さん」
「私も大丈夫です。これでも勘は鋭い方だから。予想もばっちり当たってたし」
「……過信したら躓くわよ」
　そっけない莉鳥の態度にめげることなく、琉歌は誘う。
「先輩、これからカラオケ行きませんか？」
「……何を歌うの？」
「もちろん、あの歌を」
　それだけで通じた。
　寝子祭で一緒にステージ衣装を着て歌った歌。
　あの時溢れた涙のことは、できることなら忘れたいのだが。
「断ると言ったら？」
　だが琉歌は怯まない。むしろ楽しそうに見える。
「そんな聞き方をするってことは、断らないってことでしょ？」
　この後輩の度胸には、毎度驚かされる。
「……負けたわ。どこに行くの？」
「いいところがあるんです」
　こうして莉鳥は思いがけずカラオケに付き合うことになったのだった。