いきなり！　ドラマ出演でショー！！｜リアクション

いきなり！　ドラマ出演でショー！！

「今回は違うシーンだけど、お互い頑張りましょうね」
「うん。いいドラマにしようね」
　綾花と柚春が笑顔で頷き合っていると、視線を感じた。よく見れば、それは寝子高生のようで……？
「！？　いや、先生がいたのでびっくりしたんです」
　そう言ったのは藍川慶介。彼の言葉に２人は「「そう（です）（だ）よね」」と異口同音。話によると三人とも自室にあった手紙を読んでいたら現場入りしていたようだ。
「先生方や先輩方みたいに台詞が多い役じゃないけど、がんばりますっ」
　慶介もやる気満々な様子を見せるが、内心ではちょっと緊張していた。その他にも、撮影クルーの人たちが皆猫耳と尻尾付きな姿にもちょっと面食らっている。
（本当に寝子島って不思議な事が多いけど、まさかいきなりドラマに出ることになるなんて……）
　幸いにも、同じ高校の先生や先輩もここにいて、少し話す事でちょっとは気が紛れた。慶介は自分の台本を開き、セリフや行う演技について確認しておくことにした。

　絢とあおいがボタモチから説明を受けている姿を見、鴻上彰尋は目を僅かに見開いた。そして台本を見直せば、彼の役どころは『お姫様たちのSP役』とある。
（俺の役目は、二人のお姫様を国まで連れ戻す事。二人の命を狙う者から守る事か）
　よく見たら、「はぁい♪」と手を振る女性が一人。真境名アリサである。彼女は彰尋の衣装に注目していた。
「その衣装、もしかしてお姫様のSP役じゃない？　あたしはお姫様たちを狙う暗殺者役よ。お互い、いい演技をしましょうね」
「あぁ、頑張ろう！」
　二人は軽く名乗り合うと、握手して頷く。
（不思議な撮影みたいで、どうも監督は人ではないみたい……だね。でも、撮りたいドラマのお手伝いができるならいいかな？）
　彰尋は、アリサや周りの人々の様子を見、気を引き締めた。一方、アリサはアリサで静かに考えている。
（出演するか否か、返事を出す前にいきなりここに……。これもいわゆる『神魂』とやらのせいなのかしらね？　でも、割り振られた役はなかなかいい役じゃないかしら？　おもしろくなりそう！）
　しかも、SP役もいる。もしかしたら対決もあるかもしれない。アリサは撮影が待ち遠しくなっていた。

　――しかし、神魂による災難が待ち受けていようとは……予想していないのであった。

（これは、いい記念になる！）
　と、ドラマ撮影に前向きな京極花音。彼は「何の役だろう……」とドキドキしながら台本の内容をチェックする。
　するとそこに書かれていたのは『新人営業マン（新婚ホヤホヤの若い旦那さん）』であった。
「え？」
　思わずそんな声が漏れた。目が点になった。花音はちょっと顔を赤くしながら自分のセリフを確認しする。

妻「いってらっしゃい、ダーリン！」
夫「あぁ、いってくるよ、ハニー」
（玄関前で熱いハグをする二人）

「こ、これをやれ、と……？」
　花音の頬だけでなく耳まで赤くなっていく。そんな花音の様子に気付く者はおらず、皆撮影の準備に取り掛かっている。
「君も、そろそろ準備したまえ」
　ボタモチの言葉に頷きながらも、花音の脳裏には台本に書かれたセリフがぐるぐる回っていた。ついでに花音の目もぐるぐるしていた。

　――こうして、『ニャオック！』の撮影は始まった。

このページにイラストを設定する