ラビリンス・オブ・オンセン｜リアクション

ラビリンス・オブ・オンセン

　ダンジョン最奥部。
　別にそのようにどこか書いている訳では無いが、なにやらものものしい様子や、雰囲気から、そろそろこのよくわからない怪異が終幕に近づいていることを、誰もがなんとはなしに了解していた。
　

「それはそうと、ダンジョンの奥にいる「アワワ魔王」って……」
　誰かが呟く。
　
　ダンジョンのボスは一体、何者なのか

　その時不意に長い通路の先に、のれんのかかった横開きのガラス扉が見えた。

（いる）
　この先に。

　準備を確かめ、一同頷きあい、扉を開ける。

　薄暗いその中はーー。

「空洞？」

　寝子高の体育館以上の広がりを余裕で感じさせる広大な空間。
　一見して蠢く気配のあるものはない。
　それでも、なにかの気配はあった。

　その時。

「泡が！？」

かつてないほど大量の泡が、四方八方から溢れ出てきて、巨大な人型を形づくる。

その中央部には……。

「樋口先生？」

サモトラケのニケの像を思わせる、美しい女性の姿があった。その下半身は泡と融合の状態にある。気を失ったように、その瞳は閉じられている。

いかなる理由からか、樋口先生が魔王の依代として、その肉体を奪われている様子だ。

「社会の歪みが、こんなアワワ魔王を作り出したのか」
「このアワワ魔王が悪いんじゃない。アワワ魔王を作り出した人の心が悪いんだ」

といった、B級映画ライクなやりとりがあったかはさておいて。
「行くわよ！」
　2人のグラドルの特攻により、ラストバトルの幕はひらかれた。

「どおりゃああ！」

いくら解消しても尽きせぬ男社会へのウップンと、さきほどのラブラブなハグによって勇気百倍の理緒と紗月が吶喊を仕掛ける。
「俺たちもいくぜ！」その後を縫うように、ラッセル、海道、ロベルト、アヴィケンナのショタ軍団が軽快なフットワークで敵に肉薄する。
既に攻撃は慣れたもの。ランチャーの広域攻撃で大胆に泡を駆除し、残った部位を水鉄砲やブラシで消していく。

だが。

「くそ、量が多いな！」

巨大な泡の塊であるアワワ魔王、無尽蔵にシャボンを生み出していく。
大海を汚染するヘドロのようだ。

さらに直接、自分を切り離して叩きつける。その一部にでも巻き込まれたら、寝子島に吹っ飛ばされる。

「くそっ……なかなか手をだせないな……」
後方で支援に徹する七尾と修は、歯噛みする。
とくに、あおいの「色々」守ると決めている修、迂闊に手を出しきれない。

「何か、決め手があれば……」

その時、修の頭に何かが閃く。
「ステラ、ここから星幽塔の温泉が、どこら辺にあるかわかるか？」
「すごく近いの！丁度真上くらい」

……試してみる価値はあるか。
「仕掛ける。皆、援護してくれ」
思いついた修、一気にダッシュする。

「行くぞ！」
果敢な七尾、ペンギン達と一緒に突撃。仲良くなった柚春テイマーのスライムも、彼に付き従う。
「スライムが付着するのはゾッとしないが……」
ことここに及んで、躊躇する暇は無い。仲良くなったペンギン達も、一緒に突っ込んでくれる。
「どおりゃああ！！」
至近距離でオケットランチャーを連打。
敵の反撃にもひるまない。
ふたたび、泡の塊が腰部のタオルを吹き飛ばすが、七尾はひるまない。
「別に見せたいわけじゃないからな！」
仲良しペンギンが必死に七尾のデリケートゾーンをガード。
修はエネルギーを充填させたランチャーを構える。魔王の、直上の天井へ。
「時間を稼いでくれ！」
そのまま、魔王の上へ噴射。

衝撃に天井が吹き飛ぶ。ウォルター先生や珪先生らも協力。
「もう少し……」

ゴバッ！

出し抜けに、天井から大量のお湯が吹き出した！

突如現出した瀑布が、魔王を直撃する！

このダンジョンは、他の風呂と繋がっている。
ならば、天井を開ければ、他の風呂の底を抜いて、大量の湯をぶつけられるに違いない。

ダンジョンの性質を見抜いた、修の作戦だ。
「他の天井も開けて！星幽塔が近いらしい！第二階層の湯をぶつけてやれ!」
いいながら修は七尾とアヒルサンを投下。樋口先生への直射を避けつつ、相手の吹き飛んだ部分に集中大量放射を繰り出す。

「来るの！星の力が！」
ステラの声とともに、ダンジョンがズシンと揺れる。
「避難しろ！」一同が魔王から急いで離れる。

続いて巻き起こる、凄まじい量のお湯の落下。数千の滝を、逆さにすればこうなるだろうか。逆巻き、溢れ、咬み合い、泡を押し流して、流れは消えていき……

後には、全裸の樋口先生が横たわっていた。

「男子は見ちゃダメ！」
女子がタオルを、彼女の裸体に被せた。

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ラビリンス・オブ・オンセン

シナリオ

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