ラビリンス・オブ・オンセン｜リアクション

ラビリンス・オブ・オンセン

「ちょっと湯あたりしそうね……」

　ぱたぱたと、手で仰ぎながら歩く理緒と紗月。
　火照った肌が上気して、艶めかしい汗がしたたり落ちる。
　豊満な二人の肉体が、鮮烈な香気を漂わせる。
　湿った髪を振ると、水滴が虹のようにきらめいた。
　
　

「きゃあっ！」

　甲高い悲鳴が響き渡った。
　見ると、モンスターの奇襲を食らった紗月が横転している。
　すぐさまモンスターは追い払われたが、紗月は腰を痛そうにさすっている。

「それほど痛くないけど……」
「ムリしない方がいいわ」

　理緒は紗月の肩と腰に手を回し、ひょいと担ぎ上げた。
　お姫様だっこである。
　美貌の二人が、裸体に近い格好で肌を密着させているのは、艶めかしくも、古代の美神画のように神々しくもあった。

　

「あっ」
　柚春が、その場に倒れ込む。
「足をくじいちゃったみたい」
「珪先生、自分も足が痛いです」
　綾花も、その場にへたり込む。

　顔を見合わせた後、ウォルターと珪、それぞれ柚春と綾花を抱え上げる。
　といっても、相当および腰の様子で、先ほどの女性二人に比べたら著しく格好が悪い。
　それでも時ならぬお姫様だっこ、力強い腕と体温、普段と違う身体の匂いは刺激となった。

「修君、私もケガしたみたい」
　二人の様子に当てられたのか、大胆に修に言うあおい。
「……お姫様だっこ、したほうがいいのか」
「ちょっとね、ちょっと抱えるだけでいいから」

　確かに、あまり長時間お姫様だっこするわけにはいかない。
　身体が密着すると、こちらの理性が危険だ。
　
　ほとんど腕の筋肉だけで身体を抱え上げて、フォークリフトのようにお姫様だっこをする。
「きゃはははは！　くすぐったい！」
　不器用な修のだっこに、爆笑するあおい。

　だっこだかなんだかわからない、両腕による上下運動。
　八神修氏の理性に幸あれ。

「……」
　思わず見惚れてしまいそうになる七尾。
　大胆なグラドルの肢体に、タオル一枚の女生徒の姿。
　うっかりすると視線がそちらに行きそうになる。
（いかん！）
　慌てて目をそらす。

「なんでショタをガン見してるんだい？」
「しまった！」
　女子を見ないようにして、結果的に男子を見てしまった。
　慌ててペンギンへと視線を向ける。

　ペンギンと七尾がじっと見つめ合う、謎の時間があった。

「俺もケガしたみたいだな」
「か……海道？　お前、関係ないだろ！？　ただ楽したいだけじゃないのか」
「お、ショタ同志のハグ？　いいね！　九十五点！」
　電気風呂に適応して、すっかり楽しんでいるロベルトのリラックスした声。
「電気は健康にいいよ！」

　などとわいわいやっているうちにも、状況はクライマックスに突入しつつあった。

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