【球技大会】冬の熱き決戦！｜リアクション

【球技大会】冬の熱き決戦！

　梓智依子は、家で娘の楓に球技大会の話をした。
「それでね、ママはソフトボールに出ることにしたわ。ソフトボールって野球に似てるけど、ボールが少し大きいのよ」
　野球のことはなんとなく知っている楓は、予想以上に目を輝かせた。
「かえでもソフトボールみにいく！」
　とせがみだした。
　そう言えば夏の球技大会もこうだった、と智依子は思い出した。
「わかったわ。おじいちゃんやおばあちゃんと一緒に見に来てね」
「うん！」

＜１年２組　ソフトボール＞

　そして当日のグラウンド。
「ママー、がんばって！」
　智依子は準備運動の合間に、一生懸命応援している娘ににこやかに手を振る。
「楓ちゃんが応援に来てるなら、百人力ね」
　楓のことを知っているクラスメイトたちも一緒になって手を振り、グラウンドは和やかな空気に包まれた。

　だが試合が始まれば、全神経を試合に集中する。
　バッターボックスに立つと、集中力が高まるのと同時に、歓声は聞こえなくなった。
　視界に見えるのはピッチャーと、ピッチャーの投げる球のみ。
　最初は見逃し。
　二球目はボール。
　三球目はストレート。
　そして四球目。
　いい球が飛んできた。
　智依子は迷わずバットを振った。
　カキーン！
　綺麗な放物線を描いてボールは高く遠くへ飛んで行った──ホームランだ。
　湧き上がる歓声を受けながら、智依子はゆっくりとダイアモンドを回る。

「すごい、ママ！　かっこいい！」
　大はしゃぎする娘に向かって、ハンサムな笑みを浮かべてサムスアップした。
　ホームベースを踏むと、なぜか野々ととお理事長に迎えられた。
「おめでとう！　さあこれをかぶって」
　五月人形のような兜を差し出されて「？」となったが、そのままかぶせられてしまった。
　どうも野球について勘違いしているようだが……
「ママー、かえでもいっしょにとる！」
　楓もやってきて、嬉しそうに一緒に写真に収まったので、まあいいか、と思うのだった。

　その後も智依子はクリーンヒットを決めたり。
　守備でも1塁を守りファインプレーを決めるなど活躍する。
「すごい！　すごいよ智依子さん！」
　クラスメイトも大興奮状態だが、それ以上に大興奮なのは楓だった。
「ママかっこいい！　だいすき！」
　ずっと覚えていてくれたらいいな、と智依子は思った。