【球技大会】冬の熱き決戦！｜リアクション

【球技大会】冬の熱き決戦！

〇大会当日！

　いよいよ球技大会初日。

　卓球シングルに参加する綾辻綾花は、浴衣を着て早川珪先生の元へ向かった。
「珪先生、私卓球に出るんです。見ててくれますか？」
　好きな人に応援してもらえると頑張れるから。
　言葉にしなくても、そんな思いを込めて珪先生を見つめる。
「ああ、応援してるよ。頑張って」
　珪先生はいつものように優しく、そう言ってくれた。

　莉鳥は淡々と保健委員会のリーダーとしての職務を遂行している。
「打ち合わせ通り、各自配置について。私が試合中の問題は副委員長に連絡すること」　
　そう言って、自分が出場する卓球の会場である体育館へ急ぐ。
　だが、体育館ではさっそく負傷者が出ていた。
「ちょっと、大丈夫？」
　試合終了と同時にくずおれた生徒。
　そこへ莉鳥が駆けつける。
「大丈夫、痛くない？」
　足首に触れてみると、生徒はつらそうに顔を歪ませる。
　鷲尾先生と柚春もやってくる。
「捻挫のようね。次の試合は無理よ」
　鷲尾先生が告げ、柚春は精油を塗りながら説明する。
「ヘリクリサムとラベンダーのオイル。これで痛みが和らぐはずだよ」　
「せっかく勝ったのに……」
　生徒は悔しそうだったが、代役に出場してもらうということで納得したようだ。

＜１年１０組ソフトボール＞

　篠原翠響はソフトボールに出場することになった。
　ポジションはセンターだ。
（新体操部と並行しての練習は結構しんどかったけど、それなりに練習できたかな……？）
　なんでも器用にこなす翠響は守備も打撃も穴がなく、体育科として他のクラスに後れを取る気がしなかった。
「第一試合、芸術科相手でしょ？　楽勝ね」　
　ところが……。
「予想外に強敵というか、確実に点を取りに来るから厄介というか」
　蓋を開けてみれば、相手チームと一進一退の攻防戦となった。
　どうなるか予測がつかない同点のゲーム。
　最終回、ランナー一塁のチャンス、翠響に打順が回ってきた。
「大丈夫、いける！」　
　ソフトボールは専門ではないけれど、新体操でなら全国大会での場数を踏んでいる。
　新体操の棍棒を操るように、翠響は片手でバットをかざし。
　選手と観衆がざわめいた。
「マジ？！」
「あれ……予告ホームラン？！」
　たまたまとったポーズの意味に、野球漫画に詳しいわけではない翠響は気づかない。
　しかし相手チームのピッチャーは気づいたようで、動揺を見せた。
（どうしたのかしら。でも顔に出るようじゃまだまだね）
　翠響はにっこりと笑みを浮かべる。
　煽りでもなんでもない。新体操は美しい笑顔も演技のうちなのだ。
　投げられたボールを、翠響は見とれるようなフォームでジャストミートした。
　歓声が沸き起こる。
（やっぱり屋内とは響き方が違うわね）
　走りながら翠響は、そんなことを考えていた。