心を込めて、したためて｜リアクション

心を込めて、したためて

　雨崎楓香はポストに入っていた手紙を持って、椅子へ腰を下ろした。封筒を切って中身を取り出す。
「あ、なんだ」
　母からの手紙だった。封筒に差出人が書かれていないので、少し不安だったが最も近い身内からだったらしい。
「消印ないんだけど、どういうこと……？」
　直接投函されたか消印を忘れたかだが、どちらであっても中々困惑する事態ある。
（もしかして手紙投函するために来ちゃった……とか）
　天然ボケが極まりすぎている。
　気を取り直して、便箋を開く。

「お元気ですか？
母は元気です。朝から揚げ物食べられます。（謎若者アピール）」

　その文の下に『朝揚げたてだから大丈夫』と※付きで書かれている。
「前の日の残りだからって大丈夫じゃないとは言わないけど」
　注意書きにするほどだろうか。

「ちなみに穂香（次女）は高校バレーでスタメンに選ばれ、無事優勝したそうです。テレビの取材が家に来ました、あんたの部屋も少しうつっちゃったかな？
あと雪奈（三女）も中学であんたみたいな生徒会やりたいって学級委員になったし、曳奈（末女）も元気に野生のヌートリアをつかまえています。流石にあんなに大きいのを５頭もうちでは飼えませんから、保健所を呼びました」

「穂香も雪奈も頑張ってるじゃん。……で、曳奈……なんで狩り？」
　狩ったら狩ったで飼おうとしているし、どんな家族会議を開いたのだろうかと。

「そうそう、荒太郎と大福はお元気ですか？　あんた分もあわせて（お手製）冬のセーターをお送りしますが、大学受験もあるだろうとかなりがんばっております
穂香からのお手紙も添えております」

セーターが添えてあったけど、なにこれ派手！？　
「いやいやいや！　原色レインボーは上級者じゃん！」
　部屋着で着るしかない。だが、来客があったら着替え不可避だ。
「穂香からかぁ」
　セーターは一度、そっと閉じて穂香の手紙を開いて見ることにした。
　そこには、
「……うん。あー……うん」
　白紙だった。謎すぎて固まるしかない。
「炙り出しとか水にさらすとか」
　どちらかやってみようかと思ったのだが、タイミングよくメールが来た。
『本文書いてたら寝ちゃってて書かないまま送った』のだそう。
（部活でくったくたなんだろうな）
それでも、書こうとしてくれることが嬉しい。

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