Ｇペンの付喪神、現る！～霊界漫画雑誌を廃刊から救え！｜リアクション

Ｇペンの付喪神、現る！～霊界漫画雑誌を廃刊から救え！

●探偵ケイVS怪盗テオ

　Ｇペンのジイは、想花と同じ猫鳴館の綾辻綾花の部屋も訪れていた。
　優しい綾花は困っているジイさんを放ってはおけず、初めての漫画原作を引き受けた。
「やったことはありませんが……ジイさんの為に頑張りますね」
　本好きで図書委員でもある綾花は、今まで読んで来た古今東西の書物へ思いを馳せながら物語を紡いでいく。
　読むと書くとでは大違いで、筆が止まってしまうことも何度もあった。
「なかなか難しいですね」
　けれど綾花は諦めなかった。
　何故ならば……主人公は、綾花が心を寄せる早川珪先生をモデルにしていたからである。
　そうして出来上がったのはこんなお話――

　寝子島で探偵事務所を営む探偵ケイと助手のアヤカの元に、一通の予告状が届けられた。
「ケイさん！　大変です。怪盗テオからの予告状ですよ！」
「僕たちのライバルで、世界的大怪盗でもある、灰色猫のテオから予告状！？」
「はい。『今夜０時、森繁美術館に展示中の【落神の器】を頂くぜ』――ですって」
「【落神の器】の器というと、時価数百万らっぽと言われる秘宝中の秘宝だ。すぐに警察に連絡を」
「はい。けれど、相手がテオとなると警察で太刀打ちできるかどうか……」
「もちろん、僕たちも行くさ。ついてきてくれるね、アヤカ」
「はいっ。私はケイさんの助手ですから！」

　――森繁美術館・深夜
　大勢の警官が美術館を警備している。
　ケイとアヤカは、これまでの様々な功績を知る警部の口利きで、【落神の器】が展示されている部屋にいた。
「ガハハ！　これだけの警備、ネズミ一匹、いや、猫の子一匹、通れますまい！」
　などと豪語する警部を尻目に、ケイとアヤカは油断なく目を光らせる。
　設置されたデジタル時計が０：００を告げる。
　と同時に、館内が真っ暗になった。
「て、停電ですか！？」
「停電がなんだ！　我が警察の警備は万全……ぬあっ！」
　警部が慄いたのも無理はない。
　テオは、彼のろっこんの力で世界を切り分け、空間を切り裂くようにして現れたのである！
「よお。せっかくの警備だったが、オレの前には無力だぜ」
　テオは素早い身のこなしでお宝の元へ跳び、【落神の器】を口に咥える。
　アヤカは叫ぶ。
「世界の切り分けはずるいです！」
「ふが、ふがふが（それがオレの能力だからな）」
「咥えたまましゃべらないで！　た、高いんですよ！」
「アヤカ！」
　ケイの呼び声が、慌てるアヤカを現実に引き戻す。
　ケイと準備した計画を実行するのはいまだ。
「テオっ！　見てください！」
　アヤカはお宝を守る為にろっこん＜読破＞を使って本に変えたものを解除してゆく。
　ある本は、ミラと名前を付けた白い大きな猫のぬいぐるみになった。
「ふ、ふが（み、ミラ）……！？」
　頭の上がらない婚約者（婚約猫？）のぬいぐるみに、テオは若干ひるんだ。
　追い打ちをかけるように別の本を、高級猫缶に戻す。これにもテオはかなり気を惹かれたようだ。
「ふがっ（そ、それはうまいヤツ）……！」
「アヤカ、いまだよ！」
　ケイの言葉を合図に、アヤカはテオに飛び掛かるが、寸でのところで灰色猫は彼女の手をすり抜ける。
「もう少しだったのに」
「ナイスファイトだったよアヤカ。そう遠くへは行っていないはずだ、追おう」
　ケイに肩を抱いて励まされ、アヤカは元気を取り戻した。
（ケイさん……！　恋するケイさんのために、良いところを見せなくちゃ）

　変装も得意なテオは、街のいろんな物になりきって追っ手を撒こうと試みる。
　ワゴンのぬいぐるみに紛れてみたり。
　灰色の物と同化してみたり。
　ペットグッズ売り場で服着てマネキンのまねしてみたり。
　けれどそのどれもをアヤカは見破った。
「猫好きの私には可愛すぎてバレバレです！」
　ケイと協力し、とうとうテオを挟み撃ちにするアヤカ。

「テオ、もう逃げられないですよ！」

　完成した漫画は、テオを挟んで探偵ケイと助手のアヤカがあおり気味に追い詰める見開きシーンで【つづく】となっていた。
「ふおおおおお！　テオは捕まってしまうのでしょうか！　気になりますねえ～！」
　鼻息（？）を荒くするＧペンのジイさんに、綾花はにこりと微笑んだ。
「はい。続きが気になる人は次号も買ってくれるかもしれないと思って、こんなふうにしてみました」

このページにイラストを設定する