Ｇペンの付喪神、現る！～霊界漫画雑誌を廃刊から救え！｜リアクション

Ｇペンの付喪神、現る！～霊界漫画雑誌を廃刊から救え！

霊界漫画雑誌で漫画原作！？

　ある冬の夜。
　月原想花は猫鳴館の自室で眠っていた。
　うつらうつらした意識の中、何かごそごそとする音が聞こえて気がした。壁の薄い猫鳴館だから隣の部屋の物音かと目を閉じたままいると、音は徐々に近づいてきていよいよ顔の前あたりからする。
「うう、ん……なに……」
　瞼を開けると。
「助けてくだされ。助けてくだされ」
　緑色の使い込まれたペン軸のＧペンが、ぴょこんぴょこんと顔の上で飛び跳ねている。
「……動く……Ｇペン？　……変な夢……」
　想花はもう一度寝ようと瞼を閉じた。
　すると、謎のＧペンは、思い切り想花の手の甲に尖ったペン先を突き刺したではないか！
「ひぎゃー！」
　想花は漫画みたいな悲鳴を上げて飛び起きた。

　……これが、想花が廃刊の危機にある霊界漫画雑誌「タソガレーン」に関わることになった切欠である。

「漫画を描くか漫画原作を担当してくれ？」

　Ｇペンの付喪神・ジイと名乗ったＧペンの言うことは突拍子もなかったが、必死さだけは伝わって来た。
　ここまで身を低くして……というか、ペン軸を横たえる勢いで土下座されては、断るのも憚られる。
「まあ……漫画は絵心がないので、漫画原作なら……」
「ありがとうございます、ありがとうございます！」
　して、とＧペンのジイは前のめりになって聞く。
「どのようなお話になさいます？」
「そうだなあ……電気×精霊魔法×現代×マジックバトル、時折物理なファンタジー漫画ってのはどう？」
　想花は目を閉じて、想像を膨らませてゆく。

　都会の灰色のオフィスビル。
　窓のほとんどは灯りが消えているのに、一つだけ煌々と電気がついている。
　人気のないオフィスで一人残業をしているのは20歳のしがないＯＬ――想花だ。
　地味で不細工で要領が悪いから上司に疎まれ同僚にバカにされ、友達もおらず家庭にも居場所がない。
　皆は定時で帰ったのに、自分だけは意地悪な同僚に仕事を押し付けられてサービス残業。
　それが想花の日常だった。
「あああああッ！　終わるわけないよこんな仕事ッ！　分かってて押し付けてッ！　もうイヤーーーッ！！」
　想花は怒りに任せてノートパソコンを拳で破壊した！（想花は物理娘だったのだ！）
　しかし、手が濡れていたのが運のつき。
　激しい電流が体中を駆け抜け、想花は感電死してしまったのである！

　――そして。
「……あれ、ここは……？」
　気づけばそこは、自分が働いていたオフィスで。
　なぜか意地悪な同僚によく似たモンスターが襲ってきて。
「えええっ、なになにっ！」
　無意識に突き出した人差し指から、電流が迸るッ！
「な、なんだと！　おまえが、電気の精霊の寵愛を得た電気魔術師、だとーーーッ！」
　意地悪な同僚によく似たモンスターは、説明調の断末魔を残して黒焦げになった。
「……なんてこと。ぼくは、現代の電気魔術師に転生したの……？」
　こうして想花は、電気と精霊の力をフルに駆使して、この世にはびこる悪と対峙していく中で、やがて地球を絶望の力で浄化せんとする勢力との戦いに身を投じていく……。

「素晴らしいですッ！　現代を舞台にしたエレクトリカル・マジックバトル・ファンタジーですねッ！」
　Ｇペンのジイは大絶賛だった。そこまで喜んでもらえたなら、想花も悪い気がしない。
「たまにはこういう現代ものもいいよね」
　それから１週間後――再び猫鳴館の想花へやってきたＧペンのジイは、付喪神ペン先ーズ先生による完成原稿を携えていた。
　原稿を捲り、想花はしばし絶句した。
　生原稿はそれはそれは美麗で、想像以上の出来であった。
「……すごい。さすがプロの漫画家。でも、主人公は地味で不細工って設定なのに、ちょっと美人過ぎない？」
「良いのです！　漫画ですから、読者受けするビジュアルにさせていただきましたぞ」
「それに衣装が少しセクシー気味……？　それも読者受けするように？」
「それは！　作画担当の先生の趣味です（キリッ）」
「あ、そうなんだね……」
　漫画家先生の太ももへのこだわりに照れながらも、想花は原作者としてのオッケーを出したのであった。

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