なぜならそこに浪漫があるから｜リアクション

なぜならそこに浪漫があるから

　女の子にも浪漫はあるものですよ。
　そうお淑やかに切り出す白真白は、会話の温度差が広がってしまわないよう気をつけた。
　思いっきり語りたい気持ちはあれど、芋煮紅美と解釈が一致するとも限らない。白熱した分、反発やすれ違い、さらにはドン引きという結果も起こりえる。
（まずは、オーソドックスな物から！）
　共感を得やすく、とっかかりやすい物。女の子の浪漫を語るなら、手始めに宝石は欠かせない。
「たくさんの宝石とかキラキラって、ロマンがあると思わない？」
「宝石ねぇ……真白は好きそうだよね、そういう乙女ちっくな物」
　しかし、紅美の反応はイマイチだ。
　どこか『自分には関係ない』と一線を引く態度のまま、話くらいは聞こうかと視線で続きを促されてしまう。
「ええ～、浪漫を感じない？　大きい宝石とかさ、世界に１つだけの宝石とかさ！」
「ああ、なんか曰く付きだったりするやつ？　ほら、怪盗が狙ってたりする」
　ちょっと方向性が違うような気もするが、それも浪漫と言えば浪漫だろう。
　食いつきが良いとは言い難いが、小さな手応えに嬉しくなって、真白は前に乗り出した。
　どっしりとテーブルに乗る重力感のある胸が、テーブルの脚を小さく軋ませるものだから、見慣れているはずの紅美もその迫力を思わず目で追ってしまう。
「世界に１つだけって、誰もが追いかけたくなる物だと思うんだよね。宝石やアクセサリーもそうだけど」
　思い描くのは、大会優勝者だけが手にすることのできる、世界に１枚のレアカード。実際にゲームで使えるかはルールによるけれど、キラキラしたカードは厳重なガラスケースで飾っておくだけでもいい。
　ほうっと夢見る乙女のような顔で語るのが、まさかのレアカード。真白らしくて、紅美も苦笑しながら相づちを打つ。
「浪漫かどうかはわからないけど、２つと無い物が大切なのは……まあわかるかな」
「でしょ？　でさ、唯一のってなると、やっぱ愛だと思うわけ。告白なんてロマンチックな憧れあるじゃん」
　反応があることに気を良くした真白は続ける。
　エノコロ岬とか星ヶ丘のホテルで夜景を見ながらとか、これぞというくらいベタで鉄板な告白シチュエーションは思い浮かべど、甘ったるい台詞までは思い浮かばない。
　静かに、けれど確実にテンションの上がる真白は、あんなのはどうだ、こんなのは浪漫に欠けるかと百面相している。ずっと聞いているばかりだった紅美が、神妙な顔で息を吐いた。
「紅ちゃんはロマンチックな告白って聞いてなんかこれっていう感じのってある」
「……わかんない。たださそんな遠回しでふわふわした言葉より、もっとバシッとした言葉が好感持てるかな」
　世界中の誰より好きだと言われたって、世界中の人と会って確かめたのかとか。
　この夜景も君の前では霞むと言うなら、なんで夜景の見えるところに連れてきたとか。
　引き合いに出されているものの凄さもイメージできなければ、何が言いたいのかもわからない。
「情熱的なのが、紅ちゃんの好み？」
「誤魔化しも駆け引きも、そういう時に必要って思わないだけだよ」
　理由はいらない。好きならちゃんと目を見て、真っ直ぐにそう言ってくれたらいい。
　プレゼントとか飾り立てた言葉で機嫌を取るんじゃなくて、世間体がどうとか気遣いを見せるんじゃなくて、ただちゃんと……大事な言葉があるなら伝えてほしい。
　それは愛情に不慣れであるが故か、彼女の過去に起因するのかまでは、わからないけれど。なんとなく今までのことから察する部分もなくはないが、真白は敢えてふれずに「ふぅん」と揶揄うようにわらった。
「紅ちゃんも意外とロマンチック～！　いいよねぇ、それもたしかに憧れちゃう！　他には？　聞かせてよ！」
　小突いて、冷やかして。まだまだ女の子のお喋りは止められないようだ。

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あとがき

担当マスター：浅野悠希
ファンレターはマスターページから！

みなさまご参加ありがとうございます、浅野です。

浪漫には冒険心など、手に届かない憧れなんかも含んだりしますが……。
真っ当な青春も、色っぽいものも、まさに『色々あって、みんないい！』だと思います。
手にしたからこそ、その先が見えるものなんてのもありますよね。
いろんな浪漫、ときめきを感じて頂けていたら嬉しいです。

ご意見ご感想、もしくは「読んだよ！」の代わりにダイヤリーのページチェック入れて頂けると、めちゃくちゃ喜びます。
お時間ありましたら、よろしくお願いします～！

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