寝子☆刑事（ねこデカ）！｜リアクション

寝子☆刑事（ねこデカ）！

「なんか、大事になってるみたいだけど……」
　神奈川県警寝子島署勤務・警部補の椎井莉鳥は携帯電話を覗き込んで、首を振った。
「気にしなくていいよ。僕たちはセオリー通り、目撃情報集めから」
　神奈川県警寝子島署勤務・警部補の佐藤英二は肩を竦めた。
　
　一夜明けての寝子島、シーサイドタウン。
　何やら署で面倒があったらしい。
　お偉方がなにやらもめたらしい……ということはわかっている。
　
　だが、年も若く末端の二人の刑事には、そんな中央でのもめ事などわからない。
　そうしたことに首を突っ込む趣味もない。
「事件は会議室で起きてるんじゃなくて、現場で起きている」のだ。
　そういう態度は、時治郎をはじめとした、周りの刑事たちの態度から、二人が学んだものだ。
　聡明で信念のある二人は、警察機構の腐敗に汚染されていない、フレッシュで将来を期待される若者であった。
　
　今朝も一番に現場へ到着、丹念に地取り捜査を始める。
　
　
　周囲の住人とふれあいながら、ひたすら丁寧に聞き込みを続けていく。
　わずかな情報も見逃しにはしない。
　
「玉子ちゃんの行動パターンや移動ルートは……」
　きっちり几帳面に書かれたメモを確認する英二。
「まずはこれを実際にたどってみて、目撃情報を確認するのが早いのかも知れない」
「監視カメラのデータは？」
　莉鳥が油断なく周囲を窺う。
「警察が回収しているはずだけど……署に帰ったら、もう一回確認してみよう」

　中村家の周辺。
　そのあたりに出没していた、不審な人物。
　毎日の行動。
　
「誘拐を成功させるには、情報の収集が不可欠だからね……」
「その場にいた猫を、衝動的にかっさらったとか……そういう線はないの？」
「最近は迷惑なニューチューバーとかいるから、あり得ないわけじゃないけど･･････そうすると厄介だな」

　さまざまな可能性を検討する。
　空振りになる可能性も捨てきれないが、その辺は二人ともわきまえている。
　
「なんとか尻尾を掴まないと。猫だけに」
「はいはい、面白い」

　軽口を叩きながらも、軽快に調査を続ける二人。寝子島署の大騒ぎとは関わりなく、どこか等閑な空気が漂う。
　
　――この先に待つ運命を、二人はまだ知らない。
　

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