【エイプリルフール】『幻』の江ノ島へ！｜リアクション

【エイプリルフール】『幻』の江ノ島へ！

●江の島弁財天仲見世通り

　さて、このようにして江ノ島に来てしまった寝子島民は、アリサと朝衣だけではなかった。

「んー？　なんかいつもの寝子島と様子ちがくね？　江の島？」

　水守流。彼もそうである。
　そのときテオが脳内に声を送って来た。
　曰く、寝子島とこの島が融合しちまったとかなんとか……。
「ハイハイ、いつもの不思議現象か。ぶっちゃけ俺で役に立てそうな状況じゃなさそうだし、解決するまで観光でも楽しんでくるかね」
　……異変慣れしすぎている寝子島民の典型である。
「んで、江の島ってどんなとこなんだ？」
　入手したパンフレットをのんびり開き。
「ふむふむ、とりあえず江の島弁財天仲見世通りをぶらぶらしてから神社でもお参りしていくか」
　と、仲見世通りで団子と甘酒を買ったところで、倉前七瀬に出逢った。
「よう。寝子島民か？」
「どうも。お仲間さんですか？　テオが言うには寝子島とこの島が『融合した』とのことですが……」
「そうみたいだな」
　団子と甘酒を手に、まったく緊迫感のない流。
　　かといって、七瀬も似たようなもので。
「ふむん……まあこういった問題は、なんやかんやで時間が経てば元に戻るでしょうし、僕ものんびりと観光させていただきますかねぇ」
　……異変慣れしすぎている寝子島民の典型その２である。
　そんなこんなで意気投合した流と七瀬は、なんとなく流れでいっしょに通りを歩き始めた。

　弁財天仲見世通り。
　江ノ島神社の参道にあたるこの通りには、食事をする店や土産物屋が軒を連ねている。
　寝子島で言えば、旧市街の参道商店街だろうか。
　寝子島と同じくしらすが名物らしく、しらす丼やしらすパンなんかも売っている。
「この雑多に店がならんでいるのなんかお祭り感があっていいねぇ」
　食道楽な流は、手ごろな食べ歩きグルメは手を出せるかぎり手を出してみている。
「まんじゅうにサブレ。ふぅー、こうしたプチお祭りな雰囲気を味わいながら食べる甘い物、最高だな」
　一方、七瀬は、食べ物だけでなく和雑貨の店なんかにも目を惹かれていた。
　可愛らしいちりめん細工の小物や人形が並んでいる。キーホルダーやお守りも多い。
　そうしてのんびり歩いていると、どこからともなく、香ばしい匂いが漂ってきた。
　匂いのする方へ行ってみると。
「たこをプレスして丸ごと焼いた……おせんべい？」
　平べったい板状のせんべいに、たこの脚がまるで泳いでいるときそのままにうねうねとプレスされている。
「お、美味そうじゃん。一枚行っとくか」
　流は迷わず購入し、七瀬もその匂いとインパクトに惹かれて、一枚買ってしまった。
　店のおじさんが、３５センチもあるせんべいを口の開いた紙に包んで渡してくれる。
「うわ、でかい！　ほかほか！」
「わ～、パリッとさくさくですねぇ。最初は驚きましたけど、たこの風味がうんまいです」
「だな！」
　たこせん片手に食べ歩きしながら歩いて、ふたりは通りの端まで来た。
「さて、一息ついたし」
　流はこのまま神社の方へ行ってみるらしい。
　一方、七瀬は。
「僕はシーキャンドルに行ってみます。展望台のようですし、江ノ島を一望してみたいですから」
　そんなわけで流と七瀬はここでバイバイだ。
「んじゃ、またな」
「はい。次会うとしたら、寝子島で、ですかね」
　軽く手を振って、ふたりはそれぞれ気の向くままに歩き出す。

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