【エイプリルフール】『幻』の江ノ島へ！｜リアクション

【エイプリルフール】『幻』の江ノ島へ！

●竜神を鎮めよ・その２

「待たせたな！」
「遅くなったが、加勢する」
「私も！　みんなで頑張ろう！」
　やって来たのは、桜井ラッセルと八神修、七夜あおいであった。
「腹が減ってはなんとやら。あと無事に寝子島に帰れますように！」
　ラッセルはねこクッキーを食べて気合をいれると、＜黄色いピヨコ＞でカナリアに変身した。
（攪乱するぜ！）
　カナリアは岩屋の中を縦横無尽に飛び回って攪乱する。
　竜神の雷光が、カナリアを追って幾筋も放たれる。
　戦い始まる前は、もしかしたら敢えて暴れさせた方が冷静になるんじゃないか、などと思っていたが、莉鳥の援護を受けてはいても、延々と暴れさせておく余裕はまったくない。
（こうなったら一か八か）
　竜神の頭の真上へと飛んだラッセルはそこで変化を解き、竜神の口を上から押さえかかった。
「グッ、……、生物部の一環で調べる機会があってしったんだけどっ。ワニは嚙む力はすごいけど、口を開ける力は弱いから上から押さえつけたら開かねーんだと……ッ」
　竜神はラッセルを振りほどこうと激しく頭を振る。
　振り落とされそうだ。
「ッ……ダメか！？」
　ラッセルがきつく目を閉じたとき、力強い腕が、ラッセルの体を包み込むようにして加わった。
「力勝負なら、俺に任せろ！」
　花音の三白眼が心強く笑んでいる。
「誰か！」
　ラッセルが叫んだ。
「俺たちが押さえてるから、ロープで口をぐるぐる巻きにしてくれ！」
　ラッセルは、崖下のショップへの道への手すり替わりのロープの残りを持っていたのである。
「分かったわ。七夜さんも手伝って」
「うんっ」
　ラッセルと花音が竜神の上に馬乗りになって、口を押さえつけている。
　莉鳥が竜神の口にロープを巻き付ける。
　あおいは＜カジバオトメ＞で火事場の馬鹿力を発揮し、そのロープをぎゅうぎゅうに引き締めて縛った。
「押さえこみに成功したわね。あとは竜神の浄化をすれば……」
　しかし、どうやって浄化を？　莉鳥が辺りを見回したそのとき。
「俺がやる」
　修が、先ほど『LUCK COMING』で買い求めた永田先生のパイプを抜刀した。
「あおい、手を貸してくれ！」
「えっ？　わ、わかった」
　あおいは修に言われるがまま、永田先生のパイプを一緒に握る。
　ふたりで握ったパイプを振りかぶり、竜神の額へ一撃！
「鎮まり給え！」
　バシイ！！
　岩屋の空気が震えた。
　赤く光っていた竜神の瞳が、落ち着いた黒に戻ってゆく。
「お、竜神の様子が元に戻って来たのか？」
　花音はゆっくりと竜神の上から退いた。
　竜神はもう暴れない。
　大丈夫そうだ。
「つーか、それで鎮まるとか……」
　口に巻いたロープを解きながら花音は、修とあおいが握る永田先生のパイプを見る。
「きっと竜神も暴れるのは本意じゃなかったんだろう。もとに戻りたい気持ちがあったから、コレでも効いたんじゃないかな」
　修はそういうと『LUCK COMING』で買った焼きそばパンと寝子島ビールを竜神に供えた。
「攻撃してすみませんでした。俺たちは寝子島から来たんです。どうか江ノ島と寝子島の融合を解いて、俺たちを元の世界に戻していただけませんか」
「――よかろう」
　竜神が厳かに答える。
「そっか！　寝子島にも帰れそうだし、安心したぜ」
　花音は破顔した。
「あっ、でも、もしよかったら、少しだけ時間を貰えねえかな。江ノ島、全然見れてなくてさ」
「私からもお願いしたいわ。せっかく来たんだもの。土産のひとつくらい、ほしいから」
　莉鳥も竜神に願い出る。
　竜神はごうと吠えた。
　背後の稲光は、演出だ。
「――わかった。では１時間だけ融合を解くのを遅らせよう。迷惑をかけた詫びだ。江ノ島を嫌いになってほしくはないのでな。よい思い出を作って行ってほしい」

　やれやれ、とテオが出てくる。
　物陰から様子を見守っていたようである。
「お騒がせな竜神だったぜ……だが、ま、ののこや他の奴らも楽しんだみてえだし、たまにはこんなのもいいのかもな」

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