【寝子祭】届け銀河の涯てまで！　輝きをキミと｜リアクション

【寝子祭】届け銀河の涯てまで！　輝きをキミと

（ウォルターさん、どこだろう）
　稲積柚春はウォルター先生を探す。
（一日忙しかっただろうし、どこかでゆっくりしてるかな。それとも去年みたいに生徒に引っ張りだこかな）
　そう思いフォークダンスの列を見ると、内側の列にウォルターの姿を見つけた。
（ワット！）
　そちらへ向けて駆け出す柚春。
（お話ができるといいな、少しでも一緒に居られたら嬉しい）
　そう思いながら。
　音楽が始まり、やがて先生との順番が回ってきた。
「やあ」
　柚春に微笑みを向けるウォルター。
「ウォルター先生」
　嬉しい。けれど、踊れるのはこの一曲だけだ。
　手の温かさ、大きさをずっと覚えていたい。
（今日の彼は『先生』だから僕だけと話してるわけにはいかない。
でもお休みの日になれば……先生じゃない時間を一緒に過ごせるときは、もっと距離を詰められるようになるかな）
　もうすぐ曲が終わる。
　柚春はウォルターを見つめ、なるべく近づいて囁いた。
「ワットみたいに素敵な先生が見守ってくれるから素敵な文化祭になったよ。ありがとう……ウォルター先生」
　照り映える炎が映った柔らかな笑みが、少しだけ深くなった。
　その青い目は今、柚春だけを見つめていた。

　さまざまな生徒たちと踊りながら、鴻上彰尋はチラチラとあおいの姿を目で追っていた。
　フォークダンスの他の相手には失礼かもしれない、と思いつつ。
　でも自然と目はあおいを向いてしまうのだ。
　順番がやってきて、あおいは彰尋を見て微笑んでくれた。
　一瞬でも手を繋ぎ、踊れることが嬉しかった。

　その後ろでは、佐藤英二とののこが踊っていた。
（もう終わりか……）
　名残惜しいな、と思いながら手を離そうとした英二だが。
　列の先に視線を向けたののこは飛びあがった。
「わっ、理事長がくる！　英二くん、逃げよう！」
「えっ、ちょっと、待ってよ野々さん！」
　英二はつないだままの手を引っ張られ、走り出すしかなかった。　

　フォークダンスの後。
　美化委員として片づけの手伝いをしていた彰尋はふと目を上げた。
「……あおいさん」
　まるで奇跡のように、一人で星空を眺めているあおいがそこにいた。
「あれが、秋の四辺形かな？」
　こちらを見たあおいが微笑んで言う。
（ああ、プラネタリウムで見た、あの説明の通りだ……）
　説明のままに見えた星座に感動して。
　そして、それを一緒にあおいと共有出来たことがもっと嬉しかった。
（校庭とか学校でこうして星を眺められる機会はもうないかもしれないから、大事にしたいな）

　彰尋は星が好きだ。
　そして、それ以上に……。

　満天の星空と賑やかなキャンプファイヤー。
　大きなバッグを持った御巫時子は、生徒たちがフォークダンスを楽しそうに踊る姿を尚輝先生と並んで見ていた。
「先生と回れて楽しかったです。ちゃんと休憩できましたか？」
「ええ、おかげさまで」
（楽しい時間はあっという間ですね）
「温かいコーヒーはいかがですか？」
「ありがとうございます。用意がいいですね」
「夜は冷えますから大きめのブランケットも持って来てます」
　一枚のブランケットを、二人で膝にかけて。
　ドーン！
　花火が打ちあがった。
「花火が始まるとわくわくしますね」
「そうですね」
（尚輝先生も楽しんでもらえてると良いですね）
　花火に照らされる先生の横顔を見つめて、時子は言った。
「綺麗ですね」
　

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