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【珪の場合】
さて満を持して取り掛かるのは、目の前にずずずずん。山と積まれた文芸部誌です。
そも、なぜに文芸部というものが存在するものか? 書くにしろ読むにしろ、やろうと思えばひとりでできますし、勝手にやりゃーいいのです。ならばどうして、大抵どこの学校にも当たり前のように文芸部のカンバンが掲げられ、生徒たちが集うのでしょう?
それはひとえに、書き手には読み手が、読み手には書き手が必要だから。結局のところ双方のどちらかでも欠けてしまえば、成立しないのです。自己満足にさえなりません。作品は他者に読まれて始めて完成を見るのですから。
そんなわけで今、綾花は珪先生の手になる作品の、イチ読者です。
「じゃあ……読みますね」
「うん、まあ、おてやわらかに」
もちろん、こっぴどくこき下ろすようなつもりもありませんけれど。
ぱらり、手に取った部誌のページを繰ります。目次をたどれば、すぐに見つかりました。タイトルは『アイデンティティ』、作:
早川 珪
とあります。
物語の主人公は、とある富豪の男。自らの手で築き上げた富と財産、多くの家族や友人たちに囲まれて順風満帆な人生を歩んでいます。しかし未知の病魔に侵され、彼は自身を顧み始めたことで、己の人生の空虚を悟ります。
「……存在感が? なんだって?」
「薄れてゆくのです。徐々にね。山城さん。私もいずれあなたを認識できなくなるでしょう」
「そんなバカな話があるか。医者ふぜいがおれをかつごうってのか」
「そうであれば、どれほど良かったでしょうね」
山城が症状を自覚したのは、ある朝のことだ。
歯を磨きに洗面所へやってきた一人娘が、山城を見て目を丸くした。知らないおじさんが勝手に家へ入り込み、口をゆすいでいるところへ出くわしてしまったとでもいうように。
「ああ。なんだ、お父さんか」
その一言が山城の胸を穿った、深く深く。
家族には打ち明けなかった。どう語ればいいというのだ、こんな奇天烈な症状を。
社の者にはさすがに説明せぬわけにもいくまい。気の重いまま出社したが、いつものように挨拶を飛ばすたび、返ってくる怪訝そうな顔にすぐにいたたまれなくなり、社長室へ飛び込んだ。
椅子に深く腰を下ろすと、そのまま地の底まで沈み込んでしまいそうな気がした。
「なんだってんだ……」
悪態も力なく床に染みた。
決定的だったのは、ノックも無しに社長室へ踏み込んできた室岡だった。数名の部下とともにやってきた彼は、椅子に座る山城を一瞥するも気にも留めず、煙草を取り出し火をつけた。
「副社長。いいんですか、こんなところで煙草なんて」
「いいんだよ。あいつは鈍いし、気づかないさ」
「ひどいなあ。親友じゃなかったんですか」
「そう思ってるのはあいつだけだよ。何もかも自分の思い通りにならなきゃ気が済まない、思い通りにならなきゃ怒鳴り散らし、恫喝し、上から目線で支配しようとする。あいつのキメゼリフを知ってるか? 『親友なら、分かってくれるよな?』」
「はははは!」
山城が眼前にいながらにして、室岡は部下を掌握するダシとして山城を使った。
人の貫禄、信頼、社長の威厳、尊敬などというものは己の正しき行いへ自然とついて回るものと思っていた。儚くもそんな前提が崩れ去り、山城はひどく狼狽した。分からなくなったのだ。
親友と信じた男がこうであるならば……妻は? 娘たちは?
おれをおれと見てくれる者は、はたしておれの人生に一人とて、存在したのだろうか?
読み進めるうち、主人公は見る間に転落していきます。それはもう絵に描いたような転落人生です。傲慢な男ではありましたけれど、その様は悲哀に満ちて、綾花の胸を打ちました。
己の存在が失われてゆく恐怖。己の人生のいかに空虚であったかを突きつけられる恐怖。男はやがて、自伝を綴ることを思いつきます。自分の見てきた自分の人生を、自分の見たままに書き示す……その行いを通じて、存在をこの世に残そうというのです。けれど振り返るたび悟る、理想と現実の剥離。その大きさに、男は打ちのめされてゆくのでした。
「……綾辻ちゃん? もしかしてひょっとして……泣いてる?」
「えっ? あっ、本当だ……泣いちゃいました」
ぽろり、雫が頬を伝いました。だって、悲しくて。重くて、苦しくて。
高校生、珪少年の筆致はなかなかに完成されていて、丁寧で読みやすく、それだけに男の感情が臨場感あふれる表現で伝わりました。
「珪先生は、どうしてこのお話を書こうと思ったんですか……?」
難病に侵され人生の行き詰まりに直面し、過去を振り返り見つめ直す。陳腐な言い方ですけれど、これは再生の物語……と、綾花は受け止めました。
なぜ彼は多感な時期に、このような物語を表現しようと思ったのでしょうか?
珪先生は少し首を傾げて、言いました。
「どうだったかな。当時の心境まで、あまり覚えてはいないけど。多分、なにか……打開したかったんじゃないかな」
「打開。なにかを?」
彼は肩をすくめます。
高校生の彼と言えば、綾花も先日知ることとなった、別れの時から数年が経った頃。はや数年、まだ数年です。抱えているものもあったでしょう。きっと悩んでもいたでしょう。そのもがきが形となったものが、部誌に掲載されているこの物語だったのでしょうか。
「そう、なんですね」
綾花は指で目じりを拭い、照れくさそうな珪先生へ微笑みながら、深くうなずきました。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
墨谷幽
シナリオタイプ(らっポ)
プライベートシナリオSS(500)
グループ参加
なし
シナリオジャンル
日常
恋愛
NPC交流
定員
1人
参加キャラクター数
1人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2023年03月09日
参加申し込みの期限
2023年03月16日 11時00分
アクション投稿の期限
2023年03月16日 11時00分
参加キャラクター一覧
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