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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
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秋桜への宣誓
綺麗な花畑の写真に想いを乗せて、恋い慕う人を待つ。
二人分のイニシャルを書いて南京錠を柵にかけた稲積 柚春は、猫神様へと熱心に祈った。
（どうか、猫神様と天女の二人のように……想いが繋がりますように）
運命の日まで、カウントダウンは始まった。その日までに出来ることは、神頼みだってしておきたい。
勇気を出すのは自分の仕事だけれど、大丈夫だよって背中を押してくれる。そんな気がするのは、鐘をならしてお願いしたことがあるからだ。
（……お礼は、改めて）
彼は、どこまで知っていたのだろうか。ウォルター・Bは猫恋の鐘が『永遠の祝福』を２人に授けてくれることを――知らない、というほど朴念仁ではないと思うのだけど。
ここが恋人たちの丘と呼ばれていると知っていて、付き添ってくれた。あの時より、ちょっぴりと仲が深まったと思いたい今も、応じてくれるだろうか。
彼からの返信はない。それでも柚春は待ちきれず、彼を探すために開けた場所へと駆け出した。
（来てくれる、かな）
くるりと周囲を見渡して、恋人たちの多さに苦笑する。もし来てくれたなら、自分たちもあんな風に見えるだろうか。もし想いを告げたなら、本当に。
ちらりと土産物屋へと視線を向ける。入口を賑わせているのは様々な南京錠と――。
「お待たせぇ」
「ワット！ ううん、来てくれただけで嬉しい」
お祈りだってしていたし、一緒に何をしようかと考えていたから、待ったなんて思わない。むしろ体感時間は早くって、彼が急いで来てくれたようにも思う。
「ここから、何か面白いものでも見えた？」
先ほどの柚春と同じように、ウォルターは土産物屋を見る。そこには、ここからでも読めるくらい大きな文字で『恋人宣誓書あります』と書かれていた。
「変わった物があるよね、さすが恋人たちの丘っていうか」
「そうだねぇ。オリジナルデザインの婚姻届までありそうだ」
間違えて買ってしまったら、意外と後押しになるのだろうか。それとも、覚悟が決まってないと重すぎて、扱いに困ってしまうだろうか。
「……いつか、一緒に書きに来れたらいいよね」
憧れはあっても、今はその時ではないと思っている。そう寂しそうに、でも未来に期待して苦笑する柚春の気持ちは、どれほど伝わっただろう。
「柚春にそう思われるだなんて、光栄だねぇ」
茶化すような言葉はいつも通りで、いつもなら窘めるところなんだけど。
その顔はいつもより、ほんの僅かに……悪戯な顔をせずに慈しみで溢れていた気がしたから。
「楽しみに待っててね！」
今は、生徒を半歩飛び出した柚春の時間。今はまだ、彼の恋人ではない。
それでも撃ち落とす日はもうすぐだからと、柚春は笑顔でウォルターの手を引いた。
柚春がウォルターに見せたい花は、ブーゲンビリアだった。
「へえ、花道みたいに圧巻だねぇ」
「でしょう？ でも、しっかりお花を見てあげてね、見間違いやすいから」
とても情熱的な花言葉があるのに、棘が多いことや苞が大きく鮮やかだから花と誤解を与えやすいことで、マイナスイメージな言葉もつけられている。
ネームプレートにはそこまで詳細に語られていないが、趣味の一環で花について調べることが多い柚春には、花言葉は意外と身近だったりする。
「ああ、この細い小さなのがそう？」
花を確認したウォルターは、改めてネームプレートを見る。そこには『あなたしか見えない』と熱烈な花言葉がいくつか書かれていた。
「……花言葉って、どんどん変わるんだって」
元々、国が変われば意味が変わる。新しい色が生まれて新しい言葉が付けられて、それを繰り返した結果、手に取った資料で違うなんてこともあるくらいだ。
「ワットは気にする？」
不思議な誕生日にくれた青い薔薇。それは今でこそ『夢叶う』だけど昔は『不可能』だった。真逆な意味のどちらで、彼が手渡してくれたかは、ちょっと気になる。
「うーん……そういうやりとりも素敵だけど、たくさん花言葉があるんでしょ？」
例えばこの花が『薄情』という言葉もつけられているように。受け取り方は千差万別だ。
「自分の信じたい言葉を、信じればいいんじゃないかなぁ」
無数にある花言葉のどれを選び取るか、贈ってくれた人の表情や言葉。何を信じるかは、自由だから。
「じゃあ、僕にプレゼントするならどんな花？」
「そうだなぁ……あ、あれはどう？ さっきのブーゲンビリアの返事ってことで」
真っ白いダリア。花言葉は『感謝』と書かれている。
嬉しくなって、柚春は繋いでいた手を引き寄せてウォルターと腕を絡めた。
「ありがとう！ じゃあ、猫恋の鐘も鳴らしに行こうよ」
「前に行ったでしょ、そんなに何度も鳴らすもんじゃなくない？」
「あの時のお願い事が叶ったから、お礼が伝えたいんだ」
なら仕方ないと笑うウォルターは、腕を解かない。そのほうが鐘を鳴らすのに不自然ではないだろうと思ったのかもしれないし、ただ面倒なだけかもしれない。
（でもね）
白いダリアには『豊かな愛情』という言葉も、こめられている。
二人分のイニシャルを書いて南京錠を柵にかけた稲積 柚春は、猫神様へと熱心に祈った。
（どうか、猫神様と天女の二人のように……想いが繋がりますように）
運命の日まで、カウントダウンは始まった。その日までに出来ることは、神頼みだってしておきたい。
勇気を出すのは自分の仕事だけれど、大丈夫だよって背中を押してくれる。そんな気がするのは、鐘をならしてお願いしたことがあるからだ。
（……お礼は、改めて）
彼は、どこまで知っていたのだろうか。ウォルター・Bは猫恋の鐘が『永遠の祝福』を２人に授けてくれることを――知らない、というほど朴念仁ではないと思うのだけど。
ここが恋人たちの丘と呼ばれていると知っていて、付き添ってくれた。あの時より、ちょっぴりと仲が深まったと思いたい今も、応じてくれるだろうか。
彼からの返信はない。それでも柚春は待ちきれず、彼を探すために開けた場所へと駆け出した。
（来てくれる、かな）
くるりと周囲を見渡して、恋人たちの多さに苦笑する。もし来てくれたなら、自分たちもあんな風に見えるだろうか。もし想いを告げたなら、本当に。
ちらりと土産物屋へと視線を向ける。入口を賑わせているのは様々な南京錠と――。
「お待たせぇ」
「ワット！ ううん、来てくれただけで嬉しい」
お祈りだってしていたし、一緒に何をしようかと考えていたから、待ったなんて思わない。むしろ体感時間は早くって、彼が急いで来てくれたようにも思う。
「ここから、何か面白いものでも見えた？」
先ほどの柚春と同じように、ウォルターは土産物屋を見る。そこには、ここからでも読めるくらい大きな文字で『恋人宣誓書あります』と書かれていた。
「変わった物があるよね、さすが恋人たちの丘っていうか」
「そうだねぇ。オリジナルデザインの婚姻届までありそうだ」
間違えて買ってしまったら、意外と後押しになるのだろうか。それとも、覚悟が決まってないと重すぎて、扱いに困ってしまうだろうか。
「……いつか、一緒に書きに来れたらいいよね」
憧れはあっても、今はその時ではないと思っている。そう寂しそうに、でも未来に期待して苦笑する柚春の気持ちは、どれほど伝わっただろう。
「柚春にそう思われるだなんて、光栄だねぇ」
茶化すような言葉はいつも通りで、いつもなら窘めるところなんだけど。
その顔はいつもより、ほんの僅かに……悪戯な顔をせずに慈しみで溢れていた気がしたから。
「楽しみに待っててね！」
今は、生徒を半歩飛び出した柚春の時間。今はまだ、彼の恋人ではない。
それでも撃ち落とす日はもうすぐだからと、柚春は笑顔でウォルターの手を引いた。
柚春がウォルターに見せたい花は、ブーゲンビリアだった。
「へえ、花道みたいに圧巻だねぇ」
「でしょう？ でも、しっかりお花を見てあげてね、見間違いやすいから」
とても情熱的な花言葉があるのに、棘が多いことや苞が大きく鮮やかだから花と誤解を与えやすいことで、マイナスイメージな言葉もつけられている。
ネームプレートにはそこまで詳細に語られていないが、趣味の一環で花について調べることが多い柚春には、花言葉は意外と身近だったりする。
「ああ、この細い小さなのがそう？」
花を確認したウォルターは、改めてネームプレートを見る。そこには『あなたしか見えない』と熱烈な花言葉がいくつか書かれていた。
「……花言葉って、どんどん変わるんだって」
元々、国が変われば意味が変わる。新しい色が生まれて新しい言葉が付けられて、それを繰り返した結果、手に取った資料で違うなんてこともあるくらいだ。
「ワットは気にする？」
不思議な誕生日にくれた青い薔薇。それは今でこそ『夢叶う』だけど昔は『不可能』だった。真逆な意味のどちらで、彼が手渡してくれたかは、ちょっと気になる。
「うーん……そういうやりとりも素敵だけど、たくさん花言葉があるんでしょ？」
例えばこの花が『薄情』という言葉もつけられているように。受け取り方は千差万別だ。
「自分の信じたい言葉を、信じればいいんじゃないかなぁ」
無数にある花言葉のどれを選び取るか、贈ってくれた人の表情や言葉。何を信じるかは、自由だから。
「じゃあ、僕にプレゼントするならどんな花？」
「そうだなぁ……あ、あれはどう？ さっきのブーゲンビリアの返事ってことで」
真っ白いダリア。花言葉は『感謝』と書かれている。
嬉しくなって、柚春は繋いでいた手を引き寄せてウォルターと腕を絡めた。
「ありがとう！ じゃあ、猫恋の鐘も鳴らしに行こうよ」
「前に行ったでしょ、そんなに何度も鳴らすもんじゃなくない？」
「あの時のお願い事が叶ったから、お礼が伝えたいんだ」
なら仕方ないと笑うウォルターは、腕を解かない。そのほうが鐘を鳴らすのに不自然ではないだろうと思ったのかもしれないし、ただ面倒なだけかもしれない。
（でもね）
白いダリアには『豊かな愛情』という言葉も、こめられている。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2023年03月14日
- 参加申し込みの期限
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- 2023年03月21日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2023年03月21日 11時00分
