waに染まる猪口齢糖と伝統技術の饗宴 in サロネコ1371｜リアクション

waに染まる猪口齢糖と伝統技術の饗宴 in サロネコ1371

＊着物を纏って、ちょっと違う一日を

（二人で着物をレンタルできてよかったですっ！）
　愛猫萌々子は仲の良い友達である笛吹ぴりりと二人で饗宴に参加していた。
「すごく似合いますよ！　素敵ですっ！」
「ありがとう。でも、こういう着物は久しぶりで、ちょっと緊張しますね……」
　そういうぴりりではあるが、中々姿勢が綺麗である。萌々子はそんなぴりりの緊張を解そうと、配られているお茶のカップを彼女に渡した。
　一緒に渡されたのは、抹茶風味のチョコレートを挟んだ最中。早速食べてみると程よい抹茶の風味とまろやかなミルクチョコレートの舌触りにほっこりする。ぴりりは緑茶を一口飲み、表情を緩めた。
「これは……、緑茶に合います！」
「ええっ！　チョコレートにも本当にいろいろありますね。本当に和菓子みたいな見た目ですっ」
　萌々子はそう言いながら新たに貰った２つのチョコレートをぴりりにも渡す。
「ふふっ、こっちは柚の形をしていて中身も柚風味ですね。そして、この丸い形のはあずき風味になっています！」
「本当なのです！　私は、こっちのあずき風味が気に入りました」
　二人でわいわいとチョコレートを楽しみつつ、しばしおしゃべりに興じる。どのチョコレートが美味しそうとか、別の参加者の和服が素敵とか、等々。
　ある程度おしゃべりしたところで、ふと萌々子はまだ手紙のお礼を言っていない事に気付いた。彼女は遅くなりましたが、と切り出した。
「あのお誘いのメール、とても嬉しかったです！ただ、間違ってたらごめんなさい、ぴりりちゃんが友達を遊びに誘うのに慣れてない感じがしまして」
「あぁ……、やっぱり、ですか？　私は、あまり友達と出かける機会がなかったので……」
　彼女の言葉に、ぴりりは表情を曇らせた。その流れで、萌々子はそっと口を開く。
「あなたはどうして風紀委員に？　言い方は悪いですけど、あまり好かれる役回りではないことをどうして引き受けられるんだろって……」
　ずっと気になっていた、と言えばぴりりは小さく笑った。
「私は、小さいときから風紀委員の人に憧れていたのです。学校の秩序を守る、かっこいい人たちだって思っていましたから」
　そのきっかけは何か、言わなかったが、ぴりりは誇らしげに微笑む。だから、疎まれても大丈夫なのだと。ぴりりのしっかりとした笑みに、萌々子は「強いですね」と呟いた。
　彼女は理由あって父親から逃げるようにこの島へとやってきた。その事もありそれまでのこともあって自分をあまり出せなかった。
「私は、いつも全力で、己を曲げないぴりりちゃんに憧れて風紀委員になったんです。まぁ、今でもやっぱり強く言えないことはありますけど」
　簡単に自分の事を話した上でこう言えば、ぴりりの目が僅かに見開かれる。萌々子は冷たいほうじ茶ラテを貰ってくると、笑顔でぴりりに差し出す。
「話してくれて、ありがとうございます。これからも、もし遊びたいことがあったら呼んでくださいね」
　自分はぴりりにとって気兼ねなく遊べる一番の友達でいたいから、と付け加えると、ぴりりは、ぱっ、と表情を輝かせ礼を述べるのだった。