真心伝える基本のチョコレート作り体験 in サロネコ1371｜リアクション

真心伝える基本のチョコレート作り体験 in サロネコ1371

☆フォンダンショコラの経験

　先日ウォルター・B先生にショコラーデ・コレクションに誘われた稲積柚春は、今度はウォルターをチョコ作りに誘った。
「ウォルターさんがフォンダンショコラ作りも気になっているようだったから」
「気になってるというか、僕はあまり自信がないんだけどねぇ」
「ウォルターさん１人で料理に挑戦させられないや。上手く作って、メアリさんのお土産にしようね」
　どんな科目も教えられてスポーツ万能でもあるウォルターも、料理は苦手だっだ。
「以前一緒に作ったときは、ワットが分量を量らず豪快に材料をボールに入れたこともあったね。手料理を振る舞ってくれたときは焦げ焦げだし……」
「僕は食べる方が得意だからねぇ。今日は稲積に教えを乞うとしようか」
「僕としてはワットが食べる専門でもいいけど、一緒に作れるようになったら嬉しいな」

　植物園のチョコレート作り教室に向かい、柚春は意気揚々とフォンダンショコラコースを選ぶ。
「中に入れるのは板チョコでも良さそうだけど、折角だからガナッシュにしようか」
　柚春が作ってしまえば安心なのだが、できるだけ作業は取り上げないで分担することにした。
「材料は僕が量るから、ワットは粉をふるいにかけて」
　おぼつかない手つきをハラハラしながら見守る。
「わっ」
「……ワット、顔粉だらけ」　
　手元が狂って粉だらけになったウォルターの顔を、笑いをこらえながら拭いてあげる。
「苦手だと知ってるだろう？　稲積が一人で作ったほうがうまくいくんじゃないか」
　ちょっと不機嫌になった様子のウォルターを見て、柚春は刻んだガナッシュを少しつまんで彼の口元に持っていく。
「まあまあ、チョコをつまみ食いさせてあげるから機嫌直して」
「……」
　少し迷ったようだが、ウォルターは柚春の手からガナッシュを食べた。
（ワット、ちょっと可愛いな）
　
「できた！」
　柚春が歓声を上げる。
　オーブンが爆発しては困るのでそこだけは柚春がしっかりチェックして、なんとか無事に出来上がった。
　多少焦げたりはみ出したりはしているけれど。
「大丈夫、ホイップで隠しちゃえ」
　柚春が手慣れた様子でカバーする。
「……これからも、ワットと色んなことを経験できるといいな」

　手を洗った柚春は、右耳にだけつけているウォルターの瞳と同じ色のピアスに触れて呟いた。
「初めての痛みがワット（のプレゼント）でしあわせだよ」
「……稲積、そういう語弊をまき散らす発言はどうかと思うけど」
「へ？　どういうこと？」
　あくまで無意識な柚春だった。

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