真心伝える基本のチョコレート作り体験 in サロネコ1371｜リアクション

真心伝える基本のチョコレート作り体験 in サロネコ1371

☆彼女のために

　寝子高３年の万条幸次は、写真を撮ろうとたまたま植物園を訪れていた。
　そこで入口の『チョコレート作り体験』の掲示を見つけた。
「チョコ作り体験なんてやってたんだ。彼女へのプレゼントにやってみようか」
　面倒なことは極力したくない幸次だが、おつきあいしている一つ下の彼女の顔を思い浮かべ、俄然やる気になった。
　係員の説明を聞いて、さっそくスタート。
「カカオを炒って……皮をむいた後は、すり鉢で砕く！」
　けっこう手間がかかる。
　カカオの焙煎を待つ間、周囲のカップルがキャッキャウフフしているのが目のやり場に困るが、こっちだって彼女のために来ているのだ。
（喜んでくれるかな）
　作るからには微妙な出来のものにはしたくない。

　カカオ豆の皮を剥いた後、いよいよすりこぎで砕き始める。
「ふー……とりあえず砂利サイズまで砕けたけど、ある程度粉になったら水とか加えて練るのかな」
「いえ、水は入れないでください」　
　係員のお姉さんが言った。
「カカオの油分で液状になりますから、水は入れなくて大丈夫です」
（え？　これ液状になるまでやらなきゃいけないの？）
　係員さんの言葉に焦る幸次。
（ここまで大変なものだとは……）
　くじけそうになるが、今さらやめるわけにもいかない。
（いやいやせっかくの手作りチョコなんだから頑張るぞ）
「気合いを入れてすり鉢でごりごり……して……」
（彼女の顔を思い浮かべればやる気も……あーっ！）
「もうムリ！　腕重い！」
　音を上げた幸次を見かねた係員さんが声をかけてくれた。
「あの、フードプロセッサーもありますよ？」
「使います！　助けてフードプロセッサー様！」
　ということで無事砕き終わることができた。
「途中まで自分で砕いたからよしとしよう……」

　ようやくできたカカオに砂糖を加えて、トッピングを混ぜ込む。
　分量を量ってみて幸次は驚いた。
「結構砂糖ドバドバ入れるんだ……チョコレートが甘いわけをひしひしと感じるなあ」
　彼女はダイエットの必要はなさそうだけど、と思いつつ。
「試しに1口分だけ砂糖を入れないのを作ってみよう、カカオ100%って言うのかな」
　間違えないよう印をつけておき、冷蔵庫に入れる。
　冷やし固める間周囲を見ると、彼女たちが楽しそうな反面、彼氏たちはぐったり疲れた様子だった。
（すりこぎで頑張っていたもんなあ、わかるよ……）

「完成だ！」
　ついに出来上がったチョコレートを試食してみる。
「ちょっと舌ざわりが気になるのは砕き不足なのかな……けど、まあ美味しく出来た」
　満足した幸次だが。
「さっきの甘みゼロのカカオ100%のやつは……ん、苦がぁっ！！」
　もう一つのチョコを試してみて、幸次はげんなりした。
「甘くないチョコって苦いだけなんだな……こっちをあげるのはやめよう、絶対に」

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