めざせ賞品ゲット！｜リアクション

めざせ賞品ゲット！

☆ねこじま挑戦バトルショー

　佐藤英二はスタジオ中の視線を集めながら緊張していた。

　ことの起こりは、野々ののこの一言。
「ねえ、『ねこじま挑戦バトルショー』って知ってる？」
　たまたまその番組を見たことがあった英二は、軽い気持ちで返事をした。
「ああ、賞品ゲットを目指して挑戦する番組だよね。賞品もらえたらラッキーだよね」
　その返事にののこは、目を輝かせた。
「そうだよね！　英二くん、一緒に出よう！」
「えっ？」
「次回の賞品、『豪華スィーツ福袋』だって！　競技はタワーから柱を一本ずつ抜いてくバランスゲーム！　英二くんこういうの得意じゃない？」
「得意というわけじゃないけど……」
　一気にまくしたてるののこに圧倒されつつ、英二は考えた。
　特に危険がある挑戦というわけではないし、実は英二は結構甘党だ。
（何より、野々さんにも美味しいお菓子を食べて欲しいし）
　ののこの笑顔のために頑張ってみよう、と思った。
「でもそう簡単に出られるわけじゃないよね？」
「応募してみなきゃわからないよ！」

　とあれよあれよといううちに２人で応募することになり、数日後には当選通知がやってきた。
　実感が湧かないまま出演することになった英二だが、賞品のゲットを目指して今、まさにクライマックスである。
（成功させた野々さんのメンタルはスゴイなぁ)
素直に感心する英二。　
（とは言えメンタル強いと言っても全く緊張しないわけじゃないハズだし多少なりとも苦労したんだとは思う。そんな野々さんの頑張りに報いてあげたいし……)

　普段ならなんてことないゲームだけれど、この状況だと緊張して手が震えてくる。
（ただでさえ倒れそうなバランスなのに震える手で触ったら即アウトだよね)
とりあえず深呼吸だ。
(呼吸を落着けて……っと）
　期待を込めたまなざしで英二を見つめるののこ。
　その表情には不安はなかった。
　そんなののこを見て、英二は崩れそうになる自分に喝を入れる。　
（心を無にして臨もう。ＴＶ番組なことも賞品も一時忘れる。目の前のタワーにだけ集中して）
　英二は手を前に伸ばし、タワーへと進んでいった。
（バランスが保ちそうな棒を、雑念なく出来るだけ冷静にスムーズに……抜去ろう！）
　
　それはまさに天使が通り過ぎたような、無音の瞬間だった。
　英二は棒を抜き去り……
　次の瞬間、大きな拍手が湧きおこった。
　満面の笑顔で飛びついてきたののこを受け止めて、英二は自分がつかみ取ったものを知った。
　

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